豊丘村へ移住をお考えの方へ移住先市町村の話題
update : 2022.11.22
写真(天竜川の東に位置する豊丘村)、地図:豊丘村役場提供
南信州、天竜川の東側の河岸段丘に位置し、人口6600人ほどが暮らす豊丘村。「マツタケの村」としても知られています。
東京•調布ICからは自動車で中央自動車道を使い約3時間20分、新宿から高速バスとタクシーを使い約4時間10分です。また名古屋•小牧ICからは自動車で中央自動車道を使い約2時間、名古屋駅から高速バスとタクシーで約2時間10分の距離です。
さらに今後、開通予定のリニア中央新幹線を使えば品川から飯田が約45分、名古屋から飯田が25分と格段に速く移動できるようになります。
豊丘村は農業を重要な産業としています。昼夜の寒暖差や夕日を浴びて育つリンゴの味は格別。他にもモモ、ブドウ、ナシ、市田柿など果樹栽培が盛んです。キュウリと市田柿、アスパラガスと市田柿などの複合経営で新規就農される方も活躍しています。
移住定住支援については、農政係が就農•移住をワンストップでサポート。令和元年度より地域おこし協力隊制度を取り入れ、農業研修を行っています。
また、空き家情報活用制度、各種補助金、ワーキングホリデー、お試し住宅、子育て支援などのサポートもあります。
今回は、豊丘村役場産業建設課振興係の松村さんにお話を伺いました。
写真:豊丘村役場提供(役場前にて、豊丘村イメージキャラクター「だんQくん」と松村さん)
はじめに、豊丘村はどのような地域になりますでしょうか?
松村さん 豊丘村は河岸段丘の地形で成り立っております。主に「下段地帯」、「中段地帯」、「上段地帯」の3つの地域があります。
天竜川沿いや役場がある「下段地帯」は平地になっていて、生活に必要なお店や公共の施設があり、車道も広くとられ生活しやすい地域になっています。ほどほどの自然の中で子育てをしたい方は、保育園や学校などの施設に近く、また同世代の住宅が比較的多い「下段地帯」が好まれるんじゃないかと思います。
写真:豊丘村役場提供(生活に必要なお店や公共施設などがある下段地帯)
その一段上の「中段地帯」に上がりますと果樹園、畑が広がっていまして、またちょっと違った風景が見えます。
「定年を迎えて田舎でのんびり暮らしたい」という方は、最近、新しい住宅もできている「中段地帯」で、農村風景が広がる田舎の生活を楽しんでいらっしゃいます。
写真:豊丘村役場提供(農村風景が広がる中段地帯)
さらに上の「上段地帯」は、山深くて谷が深い地形ですが「日本の古きよきふるさと」の風景が広がります。赤松林が多く秋に収穫されるマツタケが有名です。
他の地区より住宅は少ないですが、静かな暮らしを求める方には向いているかもしれません。ですので、豊丘村は地域によって、生活スタイルを選べるかと思います。
写真:豊丘村役場提供(上段地帯、棚田の代かきを終えて)
気候についてはいかがですか?
松村さん 移住された方に豊丘村に決めた理由を聞きましたら「雪がない地域に住みたかった」という方もいらっしゃいます。豊丘村では1年間で2〜3回降るくらいですので、県内でも寒過ぎるのは苦手な方は、南信州地域がおすすめです。
移住者にとって豊丘村の魅力はどんなところでしょうか?
松村さん 豊丘村の農業も他の自治体と同じように高齢化が進んでおります。新規就農者をぜひ、豊丘村に呼びたいということで、農政係が移住のサポートを担当しております。
移住して就農された方に理由をお聞きしたら「地域の皆さんの人柄が良かったから」とおっしゃっていただけたことが印象的でした。移住された方それぞれ移住を決断した理由は違うと思いますが、住宅、仕事はもちろんですが、そこに住んでいる「人」の影響はあると感じております。豊丘村の魅力は「人のあたたかさ」ではないでしょうか。
豊丘村の農業の特徴などを教えてください
松村さん 昔の飯田•下伊那地域は養蚕が盛んでしたが、だんだん果樹経営に移ってきまして、リンゴ、ナシ、モモ、市田柿が主な品目になり、最近はブドウ農家さんも増えてきました。ここは、日本の中心に位置する地域ですので柑橘類以外、いろいろな農作物が作れるようです。
写真:豊丘村役場提供(豊丘村の特産品、リンゴ、ナシ、モモ)
また豊丘村の特産と言えば「マツタケ」です。ふるさと納税の返礼品でも大人気のマツタケは村木でもある赤松の林が多いこと、伊那谷特有の気候や水はけの良い土壌であることなど生育に適した条件がそろっております。マツタケが理由で移住先を豊丘村にする方はいませんが、マツタケを食せる機会はグッと増えると思います。
写真:豊丘村役場提供(良質なマツタケが育つための条件がそろう豊丘村)
農業研修はありますでしょうか?
松村さん 就農目的の移住を考えている方は「遊休農地の解消」と「若手経営者として豊丘村の農業を担っていただく」目的で、地域おこし協力隊になっていただき、みなみ信州農協さんと飯田下伊那の市町村が恊働で実施している「南信州担い手就農研修」で2年間基本を学んでいただきます。
写真:豊丘村役場提供(農業研修で「市田柿」作りをする様子)
品目は主に、新しく農業を始められる方には取り組みやすく、就農後早期に収入となり収益性の高い「夏秋キュウリ」と「市田柿」になります。
南信州の特産である「市田柿」は高齢化が進み出荷者が減少しているため、就農希望の移住者に「市田柿」を作ってもらいたいという思いもあり、豊丘村では就農移住に力を入れております。
その間の生活費などは地域おこし協力隊として村からお給料が出ますし、住まいについては、村営住宅や村が借り上げたところを無償で貸与しております。
2年間の研修期間に独立後の住宅、農地、品目を決めていきますけれど、住宅と農地は近くないと農業効率がよくないため、一体で考えていきます。
また、後継者がいない農家さんで農地と住宅を手放す方もいらっしゃいますので、希望者さんにお売りするケースもあります。
そのときに、やはり地域で関わってくださる地元の皆さんがいらっしゃいます。そういう地域の方々は受け入れる意識や態勢があると思いますので、移住される方にも地域のコミュニティーを大事にしていただくことで、地域での暮らしがより良いものになればと思います。
今までの人生から180度ガラッと変わって豊丘村で農業をやっていく移住者さんの人生を台無しにしないために、初めてお会いしたときから真剣に対応させていただいております。
新規就農者への支援はどのようなものがありますか?
松村さん 国の補助制度を利用される方は、計画段階から職員が関わり話し合いを重ねております。村でも果樹の苗木を購入した場合は(農家さん全て対象)補助がありますし、いろいろ条件はありますが、新規就農者枠として100万円の補助があります。ハウスや施設、農機具などに費用がかかるので、専業農家になっていく方の準備金として補助されます。
また営農支援センターでは農機具の貸し出しも行っております。農機具は中古でそろえても費用がかかります。貸し出しは、就農し始めの方の利用が多いです。トラクターですと4時間8千円(2時間5000円)、草刈り機(フレールモア)4時間2500円(2時間1500円)、まき割り機は4時間3000円です。また、農地の斡旋も職員が行っております。
農業の他にはどのような働き方がありますか?
松村さん 一般企業にお勤めされたり、工場で働かれたり、近隣の飯田市までは車で20分ほどですので、飯田•下伊那の企業へお勤めに行く方もいます。
また、役場にはハローワークの求人票もありますのでご案内させてもらっています。
住まい探しについて教えてください
松村さん 豊丘村の空き家情報の提供は他の自治体さんと異なり、インターネットで空き家公開しておりませんので、誰でも空き家情報を閲覧できる状態ではありません。
空き家を売りたい•貸したい、買いたい•借りたい皆さんは、まず「空き家情報活用制度」に登録していただきます。その後、登録された皆さまの意向をヒヤリングさせていただき、物件を紹介させていただいております。
農業を希望される方には農地が近くにあるか、農作業ができるスペースがあるかなどが重要になってきます。また、年配で「平屋の小さい住宅」を希望の方には、そういった物件を紹介します。
ただ現在、村内に空き家は多いんですけど「空き家情報活用制度」に登録されている物件は、20件程と少ないのが現状です。登録物件を多くするため、豊丘村の地域を九つに分け、それぞれの地域にいる空き家サポーターさんに情報提供いただき、物件を探しています。
住居探しの期間は、すぐご紹介できるケースもあれば、時間がかかるケースもあります。
貸家の相場は1万円〜5万円くらい。売買物件はいろいろで、土地と家屋で150万円〜500万円という物件もあれば、それ以上の価格の物件もあります。
住宅に関する補助金はどのようなものがありますか?
松村さん 住宅用地取得•住宅新増築等助成金は新築(工事費×10分の1で上限60万円)も増改築(工事費×10分の1で上限30万円)も対象になりまして、土地は取得金額の3分の1で上限60万円です。
また中古住宅取得時、(建物取得×2分の1で上限60万円、土地は取得金額の3分の1で上限60万円)にも助成金があります。新築、中古それぞれ山間地区は、加算もあります。
また、定住目的で村内に住宅を新築または中古住宅を取得、多世帯同居のため増改築•リフォームされた方で「49歳以下の方」が対象になるものもあり、上記の新築、中古住宅それぞれの助成金と併用することができます。
例えば49歳以下の方が村内に新たに土地を購入して住宅を新築された場合は、60万円(土地分)+60万円(建物分)+30万円(若い世代の住宅取得)に加え条件が合えば加算金もあります。
空き家改修費補助金についてはいかがですか?
松村さん 改修費の2分の1で上限100万円、対象は「空き家情報活用制度」の登録者•利用者になります。改修の業者は豊丘村内の建設業者という条件があります。
(各種補助金 https://www.vill.nagano-toyooka.lg.jp/21oidenansyo/03josei/)
また空き家仲介手数料補助金もあります。長野県宅建協会南信支部飯伊不動産組合と協定を結んでおり、そちらの業者さんにお支払いする(賃貸または売買物件の)仲介手数料の上限20万円までを補助しております。一度しか補助されませんので売買物件の購入をお考えの方は賃貸ではなく、売買の仲介のときにご利用いただければと思います。
豊丘村(UIJターン)就業•創業移住支援事業補助金について教えてください
松村さん 長野県の事業として補助しておりまして、長野県内企業等の担い手不足の解消及び地域課題の解消、並びに県内への移住の促進を図るため、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県)、愛知県または大阪府から豊丘村内に移住し、就業または創業をしようとする方に対して補助金を交付します。
細かな条件はありますが、単身世帯は最大60万円、2人以上の世帯は最大100万円です。
子育て支援についてはどのようなものがありますか?
松村さん 18歳以下のお子さんは、窓口で手数料の300円をお支払いいただければ医療費が無料です。
またランドセル•テスト費用半額補助もあります。高校生は、ほとんどが電車やバスで飯田市内の高校に通学していまして、その通学定期代の2分の1を補助しています。
役場の隣に保健センターが併設していまして、子育て支援センターも兼ねています。(新型コロナの関係で制限はありますが)就園前のお子さん、お母さんが集まって遊んだり、悩みを話し合ったりしています。
写真:豊丘村役場提供(子育て支援センター)
道の駅•南信州とよおかマルシェについて教えてください
松村さん 2018年の春にオープンし、毎日生産者さんから直接届けられる新鮮な農産物や村のお母さん方が作る加工品などを販売する直売所の「四季彩市場」は、南信州の名産品などを中心に扱うお土産コーナーや、店内の工房で手作りされるお総菜コーナーも人気で、観光客の他、地元の方でにぎわっています。
またレストラン「キッチンそらら」では本格的な洋食や定食、丼を提供していますし、パンとジェラートを販売する「Bread&Sweetsきらら」では手作りのパンや地元の農産物をつかったジェラートを楽しめます。
さらに地元の生鮮食品ス―パー「パルム豊丘」やクリーニング店も併設されていますので“南信州の台所”として好評です。
豊丘村ワーキングホリデーについて教えてください
松村さん 平成28年度から行っております。「いつかは田舎へ移住したい」、「就農したい」という皆さんに、お試しで気軽に豊丘村に来られるようにと行っております。
南信州へ訪れたことがない方、あまりよくご存知ではない方に「まずは南信州、豊丘村を知っていただく」きっかけになればと思います。
宿泊費とお食事代は村が負担しており、参加者のご負担は交通費のみです。農家さんの手伝いを体験しながら、「リンゴの作業」のことや「飯田下伊那の特産である市田柿はこういうものですよ」など基本を知っていただければと思います。
農作業については、そのときの農家さん次第になりますけど現在、受け入れていただいている農家さんですとキュウリ、リンゴ、市田柿ですね。
写真:豊丘村役場提供(市田柿を収穫するワーキングホリデーの様子)
しばらく新型コロナの影響で「ワーキングホリデー」を中止していたんですが、令和3年の11月、12月から再開しまして、令和4年度は5月、6月に行い、9月〜12月も行っております。ご興味のある方は令和5年の春より行う予定ですのでご参加いただければと思います。春の作業はリンゴの摘花になると思います。
基本は2泊3日の土日月曜で、土曜のお昼に集まっていただき農家さんのほ場へ行きます。午後の半日、農作業をしていただき、翌日の日曜日は1日農作業、月曜日午前中も農作業で終了となります。
参加者の中には、「また次も参加したい。秋も来ていいですか」という方もいらっしゃいます。宿泊は村の民宿にお世話になっていまして、「民宿のお料理がおいしかった」とよくお聞きします。
最後に、お試し住宅について教えてください
松村さん 最長1カ月、お試し住宅を利用できます。テレビ、洗濯機、エアコン、電子レンジ、調理用具一式、食器類などが備えてあります。1週間の滞在ですと5千円、1カ月滞在ですと2万円でご利用いただけます。
写真:豊丘村役場提供(お試し住宅)
まずは豊丘村におこしいただき、人のあたたかさに触れ、新鮮な果物やお野菜をはじめ、田舎ならではのごちそうや自然を満喫していただければうれしいです。
写真:豊丘村役場提供(山と里の幸、豊丘村ふるさと納税返礼品)
※記事の内容は取材時のものです。最新の詳細については市町村や取材元にご確認ください。
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