売主さん・買主さんへ!上田市空き家バンクを活用しよう(上田市)

春の上田城

空き家バンクでの住まい探しに興味はあるものの、「どのような物件があるのか」「どこから始めればよいのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。

長野県上田市の空き家バンクでは、物件情報の公開や相談体制、補助制度など、移住や住み替えを検討する人を支える仕組みが整えられています。

一方で、実際に扱われている物件の多くは築年数が古く、購入後のリフォームを前提に考えるケースがほとんどです。 本記事では、上田市役所 都市建設部 住宅政策課の小笠原さんと、空き家バンク担当で信州うえだ移住支援センターの中村さんへの取材をもとに、物件探しの流れや費用の考え方、利用時の注意点などを整理します。

上田市役所 都市建設部 住宅政策課の小笠原さん

※信州うえだ空き家バンクページはこちら

🔳上田市空き家バンク 売主編

空き家バンクに登録して売却するまでの流れを教えてください

信州うえだ空き家バンク・中村さん(以下、中村さん)
上田市では、まず電話やメール、窓口などでご相談をいただくところから始まります。

その際、空き家バンクに限らず、所有者の方にとって最適な処分方法を一緒に考えることを大切にしています。空き家バンクの利用が適している場合には、申込書と必要書類をご提出いただき、所有権や相続関係などの確認を行います。

その後、担当する不動産業者を決定し、所有者・不動産業者・市の三者で現地調査を実施します。現地で物件の状態や課題を共有したうえで、不動産業者と所有者が条件面の調整を行い、媒介契約を締結します。

その後、市のホームページで物件情報を公開するという流れになります。

交渉方法として『直接型』と『間接型』があると聞きましたが、違いを教えてください

中村さん
直接型は、不動産業者を介さず、所有者自身が内覧対応から契約までをすべて行う方法です。
一方、間接型は不動産業者が仲介に入り、契約や交渉をサポートする方法です。

実際には、ほとんどの方が間接型を選択されます。直接型は、不動産業の知識や経験が必要になるため、選ばれるケースはごくごくわずかです。

※仲介手数料については、売買価格に応じて上限が定められています(詳細は不動産ジャパンの解説を参照)

※なお、売買価格が800万円以下の空き家等については、特例が適用され、報酬額の上限は30万円(別途消費税)となります。詳細は不動産ジャパンの解説をご確認ください。

空き家を『まだ大丈夫』と考え、放置してしまうケースも多いと思いますが、早めに動くべき理由は何でしょうか?

中村さん
まず大きいのは、建物の劣化です。

人が住んでいない家は想像以上に傷みやすく、空き家期間が長くなるほど修繕費がかかり、結果的に売却価格にも影響します。

また、国としても空き家の放置を防ぐ方向に動いており、行政から長期間放置され管理が不十分な空き家、「管理不全空家等」と認定されると指導、さらに重い「勧告」を受けることがあります。

一方、一定条件を満たした空き家の売却については税制面での特例制度が設けられています。(制度の詳細は国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご確認ください)

これは、「早く動いてほしい」という国の明確なメッセージでもあります。相談に来られた方には、「ここまで動いたなら次のステップに進みましょう」と後押ししています。

古い物件や傷みのある物件でも登録できますか?

中村さん
上田市の要綱上では「この条件だと登録できない」という明確な制限はありません。

たとえば、
・築年数が古い
・再建築不可
・土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域
といった条件でも、基本的には登録可能です。

むしろ、市場に出にくい物件を活用することが空き家バンクの役割でもあります。

ただし、状態によっては「更地としての引き渡し」を前提にするケースもあります。
たとえば、屋根に穴が空いている、床が抜けているといった場合は、解体を前提とした活用方法を提案することもあります。

他の自治体と比べて、50件前後の物件が公開されていて、安定して多い印象がありますが理由はありますか?

中村さん
一つは、空き家対策の住宅政策課と空き家バンクが一体となっている点です。
空き家に関する相談が一つの窓口に集まるため、情報が集まりやすい仕組みになっています。

また、定期的に相談会を開催し、所有者への働きかけも行っています。

さらに大きいのは、「基本的に断らない」というスタンスです。
他の自治体では条件を設けて登録を制限しているケースもありますが、上田市では幅広く受け入れているため、結果的に物件数が多くなっています。

加えて、担当者が継続して業務に携わっている点も特徴です。
空き家の売買は、成約までに数年かかるケースも珍しくなく、中には8年、9年かけて成約に至った事例もあります。

そのため、異動で担当者が頻繁に変わる体制では、経過や個別事情の把握が難しくなりますが、上田市ではノウハウを蓄積できる体制をとっており、長期的な視点で物件と向き合えることが、安定した運営につながっています。

売却相談ではどのような悩みが多いですか?

中村さん
「どうしていいかわからない」「こんな家は売れないと思っている」という声が非常に多いです。
特に郊外の物件や、古い住宅については、最初から諦めている方も少なくありません。

ただ実際には、自然環境を求める方など、そうした物件を希望する移住者も多くいます。そのため、「売れないと思っていた物件が売れるケース」は珍しくありません。

また、「荷物が残っているから売れない」と考える方も多いのですが、状況によっては売却につながるケースもあります。
これまでの事例をもとに、「こういう条件でも売れています」と具体的に説明することで、不安を解消しています。

売却相談を受ける宅建業者と空き家バンク担当者

比較的早く売れる物件にはどのような特徴がありますか?

中村さん
価格帯としては、500万円以下の物件は動きが早い傾向があります。
また、畑付きの物件や平屋なども比較的早く成約につながりやすいです。

上:信州うえだ空き家バンク掲載の500万円以下の物件/下:農地付き空き家
※掲載物件は取材時点の情報です。最新の募集状況などは、「信州うえだ空き家バンク」ホームページをご確認ください

一方で、古民家(※昭和25年の建築基準法制定前の建物を指す)は人気が高いものの、改修のハードルなどから成約まで時間がかかるケースもあります。

信州うえだ空き家バンク掲載の古民家
※掲載物件は取材時点の情報です。最新の募集状況などは、「信州うえだ空き家バンク」ホームページをご確認ください

登録前に注意しておくべきことはありますか?

中村さん
まずは、悩みすぎずに相談していただくことが大切です。

「何をしてから相談した方がいいのか」と考える方も多いのですが、事前に準備を整える必要はなく、迷った段階でご連絡いただければ問題ありません。

上田市では、電話での相談を随時受け付けており、気軽に相談できる体制を整えています。

上田市役所 都市建設部 住宅政策課(空家対策係)・小笠原さん(以下、小笠原さん)
窓口でのご相談には随時対応しておりますが、対面で司法書士や解体業者、宅建業者といった専門家の方に相談できる機会として、年に3回程度の相談会を開催しています。

加えて、2025年度には県外在住者向けに首都圏での相談会も実施しており、遠方からでも相談しやすい環境づくりを目指しています。

🔳上田市空き家バンク 買主編

空き家バンク物件は、どのように探すのが基本になりますか?

中村さん
まずは、物件情報をご覧いただくことがスタートになります。
上田市のホームページを中心に、長野県の「楽園信州空き家バンク」、全国版の不動産情報サイトなどにも情報が掲載されています。

上田市では、すべての物件がサイト上で公開されており、いわゆる非公開物件はありません。そのため、まずはホームページを確認することが基本となります。

新規登録や価格変更のタイミングは物件ごとに異なるため、SNSでの情報発信も行っています。

- X(旧Twitter)https://x.com/akiyabank_ueda
- Instagramhttps://www.instagram.com/akiyabank_ueda/

通知をオンにすることで、いち早く情報を得ることができ、掲載直後に問い合わせが入るケースもあります。

空き家バンク物件を購入または賃借するまでの流れを教えてください

中村さん
物件情報は誰でも閲覧できますが、内見や具体的な相談を進める場合は、空き家バンクの利用者登録が必要になります。

利用者登録は電子フォームに対応しており、スマートフォンからでも手続きが可能です。

現在はオンラインで完結できるため、遠方からでもスムーズに登録できます。

登録後は、掲載されている物件の中から希望条件に合う物件を探し、気になる物件があれば、市または担当の不動産業者へ連絡して内見の日程を調整します。

内見後、購入または賃借の意思が固まれば、不動産業者を通じて条件交渉を行い、契約手続きへ進みます。

なお、交渉や契約については、原則として不動産業者と当事者間で進められ、上田市が直接関与することはありません。

一般的な不動産取引と同様に、不動産業者が仲介に入りながら進められます。

通学区で検索できる点が特徴的ですが、その理由を教えてください

中村さん
上田市では、市内の利用者も多く、特に子育て世帯から「通学区を変えたくない」というニーズがあります。

そのため、学校区から物件を探せる仕組みを整えています。

また、利用者の傾向も変化しており、以前は市内の利用者が中心でしたが、現在は市外・県外からの問い合わせも増え、半数前後を占めるまでになっています。

リモートワークの普及により、仕事を続けながら地方で住まいを探す方や、二拠点生活・別荘的な利用を検討する方も増えています。

地域活動などに不安を感じる方へのサポートはありますか?

中村さん
市の「移住交流推進課」が生活や仕事に関する相談を受け付けています。

また、移住者同士の交流会なども行われており、地域になじむきっかけづくりも行っています。

住まいの相談と生活面の相談は相互に連携しており、状況に応じてそれぞれの窓口へ案内しています。

移住者交流会

リフォーム費用についてはどのように考えればよいですか?

中村さん
最も多い質問は「どれくらいの費用がかかるか」というものですが、費用は生活スタイルや改修内容によって大きく異なるため、市として具体的な金額は提示していません。

費用を知りたい場合は、担当の不動産業者に相談したり、複数の業者から見積もりを取ることが重要です。

内見時にリフォーム業者に同行してもらう方法もあります。

利用する上での注意点はありますか?

中村さん
空き家バンクの物件は、一般的な中古住宅とは性質が異なります。

多くが築40〜50年以上の建物で、そのまま住める状態のものはほとんどありません。
建物部分の評価額が低いケースも多く、実質的には「土地の価格を中心に検討する」ケースに近いものです。

そのため、取得費用は抑えられる一方で、リフォーム費用を含めた総額で検討することが重要です。

こうした認識の違いによるミスマッチも多いため、空き家バンクと中古住宅は別のものとして考えることが大切です。

空き家バンクを利用して物件を購入した場合、活用できる補助金はありますか?

小笠原さん
「上田市空き家バンク利用者引越・改修費用補助金」があります。

空き家バンクで物件を購入した方を対象に、引越し費用と改修工事費の両方が補助対象となります。

補助額は対象経費の2分の1で、市内・県内からの転居は上限20万円、県外からの移住者は上限50万円です。

引越し費用と改修工事費は合算して申請することができます。利用を希望される場合には、お早めにご相談いただけますと幸いです。

※写真、地図:全て上田市役所提供

※記事の内容は取材時のものです。最新の詳細については市町村や取材元にご確認ください。