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原村移住体験談 塩見様
update : 2024.12.25
写真(八ヶ岳連峰)、地図共に:原村役場提供
原村は八ヶ岳と諏訪湖の間に広がる高原(標高900m~1300m)に位置する自然豊かな村です。移住や2地域居住で近年、人口は増加傾向にあり7734人(2024年10月2日現在/2023年度比61人増)です。
気候は1年を通じて降水量は少なく、湿度も低いためさわやか。
都会からのアクセスも良く、東京から車や電車で約2時間30分〜2時間50分、名古屋からは車や電車で2時間30分〜3時間程度です。
賃貸住宅建設大手が行う甲信越版「街の住みここちランキング」では2023年度に続き2024年度も1位。
民間の有識者グループ「人口戦略会議」が公表した2050年までの若年女性人口減少率が20%未満にとどまっている自治体「自立持続可能性自治体」に分類され、100年後も若年女性が5割近く残り、持続可能性が高い自治体として分析されています。
今回は千葉県より移住された塩見さまご夫妻にお話を伺いました。
(塩見さま夫妻と奥さまのご両親)
はじめに、移住された経緯をお伺いできますか?
ご主人 妻と私の両親が長野県内に別荘を持っていまして、長野県に足しげく通っていたのが大きいです。
そんな中、妻の両親と千葉県で2世帯で住んでいたんですが、老後の人生を考えたときに、「2世帯で長野での永住も検討したいね」という話をしていて。
両親には八ヶ岳山麓エリアに良いイメージがあったので「あの辺なら原村がいいんじゃない」ということで本格的に原村を検討するようになりました。
八ヶ岳山麓エリアの中で原村に決めたのは?
ご主人 いろんな情報を聞く中で移住するといっても例えば茅野市の街中にするのか、農村部で農業用地を住宅に転用して住むのか、移住者が多い別荘地に住むのか、全然違う生活になるのがわかったんです。われわれはずっと街での暮らしが長かったので、割と都会からの移住者も多い原村の別荘地での環境に、スムーズに入っていけそうだということで原村に決めたんです。
物件探しはいかがでしたか?
ご主人 われわれは土地を探していたので15件くらいは見て、古家付きの土地も2、3件は見ました。
奥さま 親との2世帯だったので中古物件だとなかなか条件に合うものがなかったんです。あと、コロナ禍の2020年、このエリア周辺の中古住宅の物件は売れに売れて1000万円で土地と上物が付いている手軽な物件はほぼなかったんです。
土地だけだと家を建てなければとハードルが上がるので家付きの物件はなくて、土地だけの物件が残っていたんだと思います。トータルで、探した期間は2年くらいで2020年の秋に土地を購入しました。
決め手はいかがでしたか?
奥さま 夫と両親の大人4人全員が「ここの感じだったらいいね」と納得するのがハードルが高くて。周りに木など何もなくて整備された更地より、自然が周りにあって、ある程度の広さの土地を探していたんです。
原村も茅野も佐久もコロナ禍で売れ初めていたせいか、だいたい土地を分筆しちゃって150坪とかで売り出すところがなんとなく増えている気がしました。
その中で420坪の広さで、直感的にも「この雰囲気だと住んでいて楽しいんじゃないか」というのがここしかなかったんです。
(原村の別荘地に建てた塩見さま邸)
家探しでアドバイスはありますか?
ご主人 一番大切なのは将来どういう生活を思考するのか、そこがないと決められないと思います。原村といっても標高差がすごくあって900mから1300mまでさまざま、その中でどこがベターかというようなことを考えました。
不動産屋さんとお話をするときにイメージがないと、周りの自然環境の話、ご近所関係の話、具体的にこの地域どうなの?ということがわかりません。いかに自分たちの思っていることにピントを合わせられるか、そこが重要なポイントなのかなと思います。
(庭にはヤマザクラやシデコブシ)
不動産店からアドバイスなどはありましたか?
奥さま 主人が言っていたような、こちら側がある程度明確な、「こういう生活を送りたいんです」という住む家族の意見を持っていないと、おそらく話が進まないと思います。
あと遠くても回数を重ねて何度でも不動産屋さんと会ってください、ということです。やっぱり本気で移住するんですよというのが伝わらないと。小さい点でもこちらから聞いていけば、けっこう土地だけのことではなく「お隣さんはこういう人らしいんですよ」とか「道路1本隔てて、こちらの地区とあちらの地区はちょっと違うんですよ」、「あの地区は規模の大きい諏訪大社御柱祭が7年に1回あり、すごく重要視している地域だからちょっと独特ですよ」など、土地土地の居住区の情報を教えてくださるようになってくるという感じで、それはすごく助かったというか、決めるときの指針にはなったと思います。
(柿すだれ/周りの自然と調和した木の家)
工務店探しはいかがでしたか?
ご主人 不動産屋さんに地元のことをよく知っている工務店さんを紹介していただいたんです。というのは、地域によってすごく土地の特性がそれぞれあるので。
この場所は8年くらいずっと売れなかった土地だったんです。少し道路から下がった立地で。しかも非常に原村は水が豊かなところで八ヶ岳の地下水がいろんな所に湧き上がってくるんですけど、その湧き水の問題をどうするか、アドバイスからいただけたのが原村にある地元の工務店さんでした。
周りに水たまりみたいなところもありましたから、それで地質調査から入っていただいていたというのが、一番大きな決め手になっています。
奥さま どういう地盤改良が必要でいくらかかるのか、この場所に決めるときから会っていて。もちろんハウスメーカーさんを呼んでも問題はなかったんだと思うんですけど、工務店さんもすごく対応が良く、フットワークが軽くていろいろしてくださるところだったのでそのままお願いしたということです。
(家の庭にはシデコブシの木/クリスマスの時期はツリーが出迎えてくれる)
どのような家を希望されましたか?
奥さま ひとつは、ここが寒い所になりますので、「とにかく暖かい家にしてください」と。断熱材は多分、一番グレードが高い分厚いタイプが入っています。冬場、寒くて本当に大変になっちゃう状況だけは避けたいと。
家の中は以前住んでいた千葉県の家より冬は暖かいです。朝、布団から出られないといことはない。ファンヒーターを付けているんですけど、夜、部屋を暖めておけば朝、凍えてということはないので、そこは本当に感謝しています。
窓も断熱性能が高いペア(複層)ガラスで、結露もしないので良かったです。
あと大人4人だけなんですけど、テレワークができる部屋が必要だなと思いました。「みんなが使える書斎、作業スペース的な個室。ドアを閉めてZOOMとかできる個室は必要だね」」と、書斎は造ってよかったです。
(書斎ではテレワークも)
書斎はいかがですか?
ご主人 私は東京にも部屋を借りて2拠点生活なので仕事上、それはもう不可欠な部屋です。書斎から見える景色とか、野鳥とかも見ながらできるので、気分転換にもなりますし。
奥さま けっこう窓の前の木にリスとかも来てくれるようで楽しくやっています。
(家の庭のシデコブシやヤマザクラの木にはリスが時々遊びにくる)
ZOOMなどネットワーク環境はいかがですか?
ご主人 通信の環境でいうと地元のケーブルテレビ局があるので、そちらの回線を利用していて非常に安定しているかなと。
奥さま 私もオンラインで仕事をやることがあるので、主人がいないときは共用させてもらっています。千葉にいたときの仕事が、原村でも続けられるのはけっこうよかったです。
(書斎のペアガラスの窓からは四季を感じられる眺め)
別荘地では自治会など、住民との共同作業はありますか?
奥さま 年に2回の道路清掃をして地区の景観を保ちましょうというのはありますが、都会から来ている方は、そんなに若い方ばかりではなく「地区の集まりや行事などは最小限に済ませましょうね」みたいな方が多いので、長い目で見ると、想像していたよりもちょっと楽だったかなと思います。
買い物面はいかがですか?
奥さま 店の数はそんなにないと思います。買い物は、おそらく皆さんが原村の中で使われるのって中心部にある農協のスーパーだと思うんですけど1軒あります。
あとは観光客向けのお土産も買え、季節の新鮮な野菜も買える直売所が1軒あって、コンビニも1軒あります。
あとは、この辺の方は利用している方が多いと思うんですけど生協の宅配が週に1回来てくれます。だけどそれでは足りない、お野菜とか目で見て選びたいときは隣の富士見町の方に車で15分ほどのところにちょっと大きめな農協のスーパーがありますし、茅野市にも車で20分くらいのところに、さらに大きい農協のスーパーがあります。
私のお気に入りの店に「Rowan Coffee Roasters」があるんですが、原村にUターンして戻ってこられた方が開いたコーヒー豆焙煎のお店でカフェも併設されています。
晴れた日は甲斐駒ヶ岳や諏訪湖、八ヶ岳も見えるすてきなところで、居心地良い空間です。うちはもっぱらコーヒー豆の購入に行くのみですが、その時に店主とお話しするのも楽しみです。
(原村のRowan Coffee Roasters)
医療施設はいかがですか?
奥さま 原村自体そんなに大きくないので医療施設は6カ所ほどです。なので、原村の方もけっこうな頻度で諏訪市にある「諏訪中央病院」や富士見町の「富士見高原病院」に行かれていると思います。
そこで解決しない大きい病気は「諏訪赤十字病院」に行くことになるようです。車があれば諏訪市までは生活圏内なので、遠くて困るというイメージはありません。
また、両親から原村は全国でも有数な「福祉•健康の村」という話を聞いていて。村独自の医療費特別給付金の制度があり、70歳以上の高齢者などの医療費の一部を給付していただけます。
交通機関はいかがですか?
奥さま 別荘地でも定住している方は年代も上の方が多いと思うんです。通勤ではこの辺は公共交通機関、バスはそんなにないので、ギリギリまで自家用車に乗られていると思います。
最近はそれを解決するために「のらざあ」というタクシーバス的なオンデマンドを今年から原村もスタートしたんです。「じゃあ試してみよう」と「諏訪中央病院」に行く用事があったときに母がそれに乗って。高齢者ですと基本、病院までは300円で行きます。オンデマンドでもあるのでいくつかポイントの所まで行かなくてはいけないのですが、うちの場合はラッキーなことに家から1分のところで乗せてもらえて、時間はアプリで予約しておけばその時間に来てくれて、20分〜25分で病院まで乗せてくれます。意外と使い勝手はいいです。
気候面はいかがですか?
奥さま 10年前に比べると雪は減っていると皆さんおっしゃるんですけど、道路が凍ってしまうのがこの辺の一番の問題です。
とにかく村の中心まで全部坂なんです。どこに行くにも坂を上るか下がるかみたいな感じで、冬になるとJAFを呼んでいる車が多いなという印象です。歩きでも滑ってころばないように注意はしています。
ただ冬は雨氷という雨や水分で木々が凍ってそのまま光っている状態、薄い膜みたいにキラキラ光ってきれいなんです。
(光が当たると、きらきらと美しい雨氷)
ただ木が弱って倒木がものすごく多くて今年はうちでも4回ぐらい停電しました。ですので、停電したとき用に発電機を備えています。
家が林の中なので倒木で外に出られなくなることもあるので、何かしら対策をしていないと困ると思います。
雪かきは何回くらいされますか?
奥さま 雪かきは5〜6回はしていますかね。家から道路に出る所がちょっとだけ坂になっているので、雪かきしないと車が出られなくなっちゃう。1回、実際に出られなくなって病院に行けなくなった日もあります。4駆でもスタッドレスでも埋もれてしまい出られなかったです。温暖化ですけど原村も降るときは降るんだなと思いました。
(2023年冬の塩見さま邸の庭)
原村の住民の車は4駆が多いですか?
奥さま そうですね。でも、たまに2駆の方も見かけます。2駆の方は役場のある村の中心部より下の方、上の方はほぼ4駆だと思います。じゃないと走れないと思います。
原村で暮らされてみていかがですか?
奥さま 買い物できるところがいっぱいあるとかではないんですが、逆に施設が限られているのが私としてはポイントかなと。ちょっと不便な方が、そういう施設が少なければ少ないほど看板などコマーシャル的なものがなくなり、美しい村として残っているのかなと思っています。いろいろないのが、良いです。原村に駅はないけど、近くの富士見町にあるんだからいいんじゃない、そのように思います。
(自宅から徒歩で「まるやち湖」へ向かう途中に見える八ヶ岳連峰•阿弥陀岳)
ご主人 最初に佐久も検討したというのは、仕事で東京に行くことがあるので、そのときに新幹線駅があるからなんですが、高速バスだって2時間半で原村から新宿まで行くんだからいいかなと。
新幹線はなくても、逆にだからこそ他の選択肢もあるというか。
名古屋も特急に乗れば3時間ほどで行けますし。
今年から出張で地方に行く仕事も出てきたので、東京だけでなく名古屋も選択肢に入れたり、また、松本も近いしとか、視野を広げていろんな多様な楽しみ方を工夫するっていうか、そんなことをいろいろ広げていきたいかなと。近くなくて不便と思うのではなくて、広がりを持って見ていきたいです。
原村に移住を検討されている方にアドバスをお願いします
ご主人 さっきも雨氷の話は出たんですけど、やっぱり大自然の中で生活するというのが魅力です。私、冬の雪山を見るのが好きなので、こちらの冬は特に素晴らしいと思っているんです。その反面、雪の影響で停電したり生活に不便なこともあるので発電機を備えたり、周りの方のアドバイスをお聞きしてやっているんですけど、そういう意味での備えとか、地域の中で連携できることを持つというのは非常に重要なのかなと思います。
(雪をまとった冬の八ヶ岳連峰)
奥さま できればちょっと慣れたころに村の中での活動の輪に一つでも入ると「知り合いの知り合いは知り合いです」みたいな形で、良くても悪くても、わーっと交流関係広がるので、それはそれで楽しい。都会にいた頃より、踏み込んで接した方が私はいいと思うんです。すごく緊張していてもどうしようもないので、なるがままに。自然体でいた方が、みんな楽ですしね。
私は村の中の薬草研究会みたいなものに入っていたり、村のところでやっている太極拳のクラスに入ってみたり、それだけでとにかく知り合いが増えすぎちゃってみたいな感じですので。
最初は多分、意気込んでわっーと入りたいという気持ちもあると思うですけど、とりあえず、ひとつだけ入って様子を見る、本当に大変になっちゃうので。知り合いから、いろんなイベントに声がかかるようになると、おそらく最初にイメージしがちな優雅なスローライフ、にはまったくならない(笑)。
(借りている畑では、家族で家庭菜園。野菜や薬草などを育てている)
最後に、原村が『自立持続可能性自治体』と公表されたことについてはいかがですか?
ご主人 実は私の職場は民間で人口減少問題を検討し、消滅可能性都市自治体などを発表もしていた職場でもあるのですけど、人口減少している地域や市町村は、例えば、高校が地域にない、あっても大学進学や就職などで、特に若い女性が、地域から離れてしまい、進学先や就職先が別の地域でそのまま出身の地域に戻ってこないために子供が生まれない地域となり、このような動きが積もり積もった結果、いつしか人口減少に歯止めがかからなくなってしまうといわれています。
原村でも地域から離れている人はけっこう多いと聞きますが、カフェとかケーキ屋さんとか、東京や海外で勉強•生活した人が原村に戻ってお店をはじめたり、地域を活性化させていこうというお話もいくつか聞きます。
あと原村は他の地域と比べると利便性があり、観光地としての魅力があることもポイントだと思います。高速バスの乗り場(バスタ新宿までは2時間半)があり、電車も中央本線の茅野駅や富士見駅(新宿駅までは2時間弱、東京駅までは約2時間20分)から東京にダイレクトにアクセスできます。また、東京だけでなく、大阪、名古屋などの都市部から観光というかたちで来られるエリアで、リピーターもとても多い。都会へは近いし、自然は豊かだし、何もないからこそ自分らしい楽しみ方を見つけられるし、移住されてくる方も多いのかなと感じています。
(八ヶ岳連峰の麓の原村)
■写真18枚:塩見さま提供