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小川村
小川村移住体験談 権守様ご夫妻
update : 2022.05.24
写真:小川村役場提供(小川村二反田の桜と北アルプス)
地図:小川村役場提供
長野市と白馬村のほぼ中間に位置する小川村。山里に点在する集落には、人口2,400人ほどが暮らしています。四季折々の自然と北アルプスの眺望、満天の星空が身近で、春には二反田の桜や立屋・番所の桜を写真に収めようと多くの観光客でにぎわいます。
移住定住支援については、小川村役場の総務課総合戦略推進室内に「おやき研究所」を設け、空き家バンク、移住相談、移住体験宿泊施設、各種補助金、村内での起業など、移住希望者をサポートしています。
今回は北海道より家族5人で小川村立屋集落に移住された権守さん夫妻にお話を伺いました。
(古民家レストランの2階に、4月から新たに宿もオープンさせた権守さん夫妻)
はじめに、移住された経緯からお伺いできますでしょうか?
奥さま 二人とも結婚したらいつかお店をもちたいと思いながら、鎌倉や北海道など、ほかにも地方を転々と移住して飲食の仕事をずっとしてきたんです。北海道での定住も考えたことはあるんですが、それぞれの実家から北海道は遠いので、私が本州に戻りたくなって。
私が20代のころ長野県の上高地でリゾートバイトをしたことがあり、そのころから長野が好きだったので「長野にいつか住みたい」という気持ちがありまして、それで主人に「長野に住みたい」と話したら「じゃあ、いいよ」って言ってくれて。
最初は2017年に安曇野で土地を探して新築しようと思っていたんですけど、見つかっても木々が生えていて抜根からやらないといけない土地だったり、景観条例でしばりがあったり、土地購入する寸前までいったこともあるんですけど農地だったので、農地転用するにもプロセスがありすぎて「もう、安曇野じゃないのかな、ご縁がないのかな…」と思っていったん新築はやめたんです。
それから主人がいろんな市町村の空き家バンクのサイトを見始めたんですね。私たちは自宅兼店舗という思いがずっとあったので大きいお家を探していたんですけど、そのころから古民家に気持ちがシフトしていって。最初はここ、小川村の場所も知らずに、インターネットで探していたときにこの家を主人が気に入って。(https://ogawamura.jp/house/)
(購入した古民家の近くには大きな桜の木も…)
内覧はされましたか?
奥さま 簡単に来られる場所ではなかったのである程度絞って、北海道から2度ほど物件を見に来ました。小川村の前に生坂村に行ったんですけど、家が古すぎてリノベーションするのにかなり費用がかかりそうだったのでそこはあきらめて、次に小川村の古民家を見て決めまして、2019年に小川村に移住しました。
小川村に決めた理由などはありますか?
(小川村立屋集落の眺め、遠方には北アルプス)
ご主人 景色が一番ですかね。北アルプスも見えますし、桜の時季もきれいですし。静かで、のどかな雰囲気も良かったです。
写真:小川村役場提供(小川村 立屋の桜)
奥さま 信州でもエリア的には南より、雪景色がある北信地域がもともと好きなので、小川村は良かったです。
物件の状態はいかがでしたか?
ご主人 築86、7年で状態は良かったんですけど、改装をしてみるといろいろ傷んでいるところはありました。ただ、そこまで大きい傷みではなかったのでなんとかリノベをして古民家ならではの雰囲気も生かせました。
上写真:権守さん提供(改修前)、下写真(改修後。1階はレストランと居住スペース、2階は宿と居住スペース)
どの辺をリノベ―ションされましたか?
ご主人 大工さんにお願いしながら、自分でできるところは自分でやったりしました。床を張リ直したり、壁に漆喰(しっくい)を塗ったり、家のペンキ塗りが主ですね。
上写真:権守さん提供(改修前)下写真(改修後。同じ位置から撮影したレストラン)
上写真:権守さん提供(改修前)下写真(改修後。同じ位置から撮影した玄関)
漆喰塗りは難しいですか?
ご主人 全然、そんなことないですね。今の漆喰は品質がいいので水で練って壁に付けていくだけなので、そんなに難しい作業ではないです。基本は下地にパテ埋めして、めじを埋めて、それから漆喰で仕上げていくという感じです。1階部分は約1週間で仕上がりました。
(1階、古民家レストランの壁は漆喰)
(元は床の間だったスペースの壁は「はいしっくい」に炭の粉と青い粉を混ぜ仕上げている)
床についてはいかがですか?
ご主人 フローリングを張っていく感じです。紹介された木材屋さんに行って「何平米分、欲しい」とか「どんな板がいいか」など相談しながら決めました。値段のこともあったので、2階が(宿と自宅)スギなんですけど1階(レストランと自宅)はパインのフローリングになっています。
パインを選んだ理由はありますか?
ご主人 他に分厚くて幅が大きい板もあったんですけど、値段が2倍くらいしたので、安く手に入って量も確保しやすいパインを選びました。
(1階レストランの床は無垢のパイン材にニス仕上げ)
2階は厚さが普通12ミリなんですけど、コスト面で9ミリの薄いフローリングにしました。なので、補強を兼ねてベニヤを張った上でフローリングを張りました。大工さんと2人で張ったときは2階の20畳以上で3日、4日かかり、1人だと1階の半分を張るのに10日以上かかりました。
(2階の宿。スギ板は色塗りをして仕上げている)
奥さまもリノベをされましたか?
奥さま お店を改装している間、主人は村内の農業研修で働きながら空いた時間に改装していたんですが、当時、私は別のお仕事もありましたので、休みの日に壁に漆喰を少し塗るくらいでした。自然素材で古民家の良さを生かせるように自然なものでやりたいと思っていたので。
リノベはどれくらいの期間がかかりましたか?
ご主人 1階のお店が1年半くらいで、2階の宿泊の客室が完成したのが最近なんですよね、2年かかりました。この小川村の静かさや何にもなさを逆に楽しんでもらえたらうれしいです。
(2階、宿泊用の1組限定の客室。古民家の雰囲気を残すため梁はそのまま)
その間の住まいはどうされましたか?
ご主人 役場の方のサポートもあり、少し離れたところに古民家を借りられることになり、そこで仮住まいをしました。
実際に住まわれて古民家はいかがですか?
ご主人 古民家らしく元の造りも残しているので、雰囲気はすごくいいですね。冬は少し寒いですけどそんなに気にはならず、住みやすいですし居心地もいいです。
写真:権守さん提供(2020年6月にオープンした1階の古民家レストラン)
奥さま かやぶき屋根や急なトタン屋根の「まんが日本昔ばなし」に出てくるような大きいお家を見ると「うわー!」と思うじゃないですか。いざ住んでみて太い柱や梁(はり)を見ていると、歴史があるお家に自分が住めているという良さもありますし、お家に帰ってきたときに外観とか見ていても「いいなー、こんな家に住めてうれしいな」と思います。冬は寒いとかデメリットはあるんですけど、夏は涼しいし安心感はありますよね。
(1階と2階の居住部分)
それと代々、いろんな方が住んでいた雰囲気が残っていたので、慣れるのが早かったです。うちは売り主さんが小川にずっと住んでいらっしゃる方なので、ちょこちょこ来てくれたり、気にかけてくれたり。
うちは今、3人の男の子がいるんですけど、その売り主さんも3人のお子さんを育て上げたという共通点があったのでそこで交流が広がって、お野菜や山菜をいただいたりもするんです。
そういう関係性も新築だとなかなか広がらなかったと思うので、地元の方とつながるのも早かったですよね。売り主さんがご近所の方に「こういう人たちだよ〜」と私たちのことを紹介してくださるので、警戒心なく皆さん接してくださいます。
地元の方や先輩移住者と知り合うにはどうしたらいいですか?
ご主人 まず、役場に行って相談することをお勧めします。その中で、お店をやっている方もいるので紹介してくださったり、いろんな方を紹介してくれると思います。
僕の場合は農業とかも興味があったので農家さんを紹介してもらい、手伝いに行ったりしながらそのつてで知り合いがどんどん増えていきました。そこから地元の方とつながりができた感じです。
奥さま 移住者で新規就農支援者の里親に認定された農家さんがいらっしゃったので、そこに最初の1年目だけ研修先として入らせてもらいました。
その中でリンゴに興味があるという話から、「実は小川村もリンゴ作っている農家さんいるんだよ」と教えてもらい、高齢化で後継者がいないので引き継ぎたいという農家さんもいるとのことで、そこにも行かせてもらうようになりました。
農業は初めてでしたか?
ご主人 北海道では農業もするペンションに勤めていたので、そこで農業には携わっていましたね。
最初はお店で出す野菜を作る予定でしたけど、地元には長年、農業をやっている名人が多いので、そういう方からお安く買わせていただいています。
ご自身でも何か作られていますか?
ご主人 タマネギとかニンニクとか大量に店で使えそうなものを作っています。それとは別に僕はリンゴの農家を目指していて、リンゴも作っているので、お店で出すリンゴジュースなどには使っています。
(現在は研修2年目のご主人、リンゴ畑からは北アルプスの眺望も)
移住に関してアドバイス等はありますか?
ご主人 時間がある人なら仮住まいで住んでみると地元の情報が入りやすいので、理想の土地とか古民家でも見つかりやすいと思います。これから移住したいと考えている人もそうやって探していますね。
奥さま 今、長野県は市町村ごとに空き家バンクもあるし、小川村には「おやき研究所」という移住相談窓口が役場にあるので、まずはそこに相談するのが良いと思います。
(小川村役場移住相談窓口の「おやき研究所」https://sumuz.jp/live/1034)
北海道にいたとき、主人は仕事でしたので、移住に関することは私がしていて「農業に興味があるんですけど、そういうところで働ける場所はありますか」とか「古民家を改装する間、仮住まいできるところはありますか?」とか「開業したいんですけど、何か補助はありますか」とかいろいろ聞きましたね。
小川村に住んで村内で新規開業する人向けの補助金(上限100万円)や空き家改修補助金(上限100万円)、空き家の家財整理補助金(上限20万円)、他にも子育て支援に関してもいろいろあるので、手厚いと思います。
また、移住する前に何日か住んでみて小川村を知ることができる「移住体験宿泊施設」もあるので良いと思います。私たちもこの家を見にきたときに2泊ほどしましたので。
店名の『リュイソウ』は、どのような由来ですか?
写真:権守さん提供(ご主人と奥さま。玄関前にて)
ご主人 お店のロゴとかを考えてくれたデザイナーさんに提案していただいて、フランス語で「小川」という意味です。ロゴも六本の斜めの字で小川になっています。
どのような料理を出されていますか?
写真:権守さん提供(夏のコースメニュー。モロッコインゲン、ナス、レタス、ミズナなどの野菜は
地元の小川村産、ポタージュに使われるトウモロコシはご主人が栽培、パンは奥さまの担当)
ご主人 こだわっていないんですけど、コース形式のフレンチが多いです。食材はなんでも揃うので小川村の野菜がほとんどですね。春先は山菜のフキノトウとかコゴミが出てきますね。おいしい、朝採れたものを昼に使えるので新鮮です。小川の良さを知っていただけるような料理を心がけています。
奥さま 私はパンとデザートを担当して仕込みをして、あとは接客ですね。
お客さまの感想はいかがですか?
奥さま 「こんなところにこんなお店があるなんて」と驚かれます。
お出ししているのは普段、皆さんが食べているような野菜ですけど、新鮮なのでおいしいじゃないですか。ポタージュとかにするんですけど、お客さまからは「こんなに甘いんだ」「ほかに何か入れてる?」とお聞きされるので「何も入ってないですよ」と。
写真:権守さん提供(ご主人が育てたトウモロコシのポタージュ)
春に出るタケノコの淡竹(はちく)を前菜で使うんですけど、お家だとおみそ汁とか煮物系になると思うんですけど、うちでは煮物としては出さないので「こんなふうになるんだ」とか「こんな食べ方したことないから新鮮」とか言ってくださるので、おいしいと思います。旬のものを食べていただいています。
村の雰囲気などはいかがですか?
ご主人 人がいいですね。そこが何よりです。地元の人は移住者も温かく歓迎してくださいますし、よくしていただいています。野菜を持ってきて「これ食べな」とか助かります、本当に。
移住者を歓迎する雰囲気があるんですね
奥さま そうですね、本当に警戒心もなく歓迎してくれましたね。特に私たちが住んでいる立屋という地区は山の上にあって、何十年も子どもがいなかった地区だったことから「よく来てくれた。男の子3人も来てにぎやかでいいね」と言ってもらえたり。
御柱祭もあるんですよ、実は小川村は。今年、御柱の年で主人も参加しますし、子どもも参加するので、やっぱり若い男の人が入るとご近所の方も喜んでくれたし、私たちもできる限りのことはお手伝いできればと思います。
(1階の古民家レストランにて、ご主人と奥さま)
■リュイソウ http://ruisseau-ogawa.jp/