信州へ移住をお考えの方へ
移住者の声

諏訪地区
下諏訪町
下諏訪町移住体験談 綿引様
update : 2025.11.21

(諏訪湖と下諏訪町)

写真、地図:下諏訪町提供
諏訪湖の北側に位置する下諏訪町は、町内に共同浴場が点在し、自宅に温泉を引ける家もあるほど温泉が身近な町です。江戸時代には中山道と甲州街道が交わる宿場町として栄え、今も諏訪大社下社や古い町並みにその歴史が息づいています。コンパクトな町の中に商店街や学校、病院などがそろい、徒歩や自転車で日常の用事が済む暮らしやすさも魅力です。
こうした環境の中で中古住宅を購入し、大規模な耐震・断熱改修を行ったのが移住して9年目の綿引さん。古い家の趣を生かしながら、安全で快適な住まいへと生まれ変わったリフォームの過程を伺いました。

(事務所の大家さんの誕生日会を商店街のメンバーでお祝い。右から2人目が綿引さん)
はじめに、この家との出会いはどのようなきっかけでしたか?
綿引さん 店舗などを改装して活用している事例を身近に見ていたことや、以前ハウスメーカーに勤めていた経験から古いものを生かすほうが好きだったので、最初から中古住宅のリフォーム前提で探していて、ネットで見つけました。
リフォーム前の状態と、改修で重視したことは?
綿引さん 前の方が住んでいたので住める状態でしたが、おそらく昭和に建てられた家なので、寒さと耐震性に不安がありました。断熱性と耐震性を中心に手を入れ、2部屋をつなげて広いリビングダイニングにしたり、キッチンや寝室も改修しました。

写真:株式会社 東洋開発提供(リフォーム前の寝室)

(リフォーム中の寝室)

(リフォーム後の寝室)
耐震補強はどのような形ですか?

写真:建築士事務所「Layer Architects + Open Design」提供
(耐震補強は、耐力壁(写真奥の合板)を追加して壁の強度を高めた)
綿引さん それぞれの家の既存の状況によって補強方法は変わってくると思いますが、この家では、耐力壁の増設、筋交いの補強、柱の接合部を耐震金物で補強、さらに既存の基礎をコンクリートで補強しました。
改修前の評点は0.31でしたが、改修後は1.10と強度が増しました。
※建物の耐震性能を表す「評点」は、既存住宅の耐震診断で用いられる評価点です。建物の構造や劣化状況、地盤の条件などを総合的に評価して算出されます。新築時に定められる「耐震等級」とは異なる概念です。下のチャート図は評点と地震時の被害の目安をまとめたもので、一般的に評点1.0以上であれば大地震でも倒壊の可能性が下がるとされています。
※クリックすると画像が拡大されます
※クリックすると画像が拡大されます
耐震改修チャート図:監修・制作:名古屋工業大学建築・デザイン工学科井戸田研究室ほか、
パンフレット「木造住宅の耐震リフォーム」より
断熱材はどんな種類をお使いですか?
綿引さん 床は主にフェノールフォームで、熱伝導率が非常に低く、高い断熱性と耐久性があります。
天井はグラスウールを2層で施工し、コストを抑えつつ防音性にも優れています。
外壁面は吹付硬質ウレタンフォームを使い、既存の壁厚に収めながら断熱性・気密性を確保できるのが利点です。
下の写真は2階で断熱材を施工した様子で、将来は子ども部屋として使えるように考えています。

写真:建築士事務所「Layer Architects + Open Design」提供
(外壁面の断熱材は吹付硬質ウレタンフォームを採用)
改修前の断熱等性能等級は最低水準の等級1(UA値3.94)でしたが、改修後は等級6(UA値0.34)まで上がりました。
【補足】断熱性能と地域区分の基準について
※住宅の断熱性能は、「地域区分」で定められた気候条件に基づき、
「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)」という2つの数値で評価されます。
これらの値をもとに、住宅全体の断熱性能を「断熱等性能等級」というグレードで示しています。数字が高いほど高性能になり、現在は最高等級として等級7までが設定されています。
UA値・ηAC値はいずれも数値が小さいほど性能が高いことを意味します。(ただし、地域区分によっては、ηAC値の基準が設定されていない場合があります。)
※「地域区分」は、日本全国の気候の違いに合わせて、エリアを1から8の区分に分けたものです。
寒冷地ほどより厳しい断熱基準が求められます。長野県のように標高差が大きい地域では、市町村ごとに区分が異なり、長野県全体では2から5の地域に分かれています。
例えば、下諏訪町は「4地域」、隣接する岡谷市は「3地域」となり、同じ県内でも求められる性能が異なります。
下の表は、地域区分ごとの等級6におけるUA値の基準をまとめたものです。
出典:国土交通省の資料を基に作成
1階のリビングはいかがですか?

写真:株式会社 東洋開発提供(リフォーム前のリビング)

(リフォーム前のリビング。和洋室6畳・和室8畳・和室6畳の3部屋の壁を取り払った様子)
綿引さん 上の写真は1階の和洋室6畳・和室8畳・和室6畳の3部屋の壁を取り払った様子です。少し見えにくいのですが、梁の裏側に赤茶色の鉄骨が横に架けてあって、それを意匠として残し、以前の雰囲気を生かしてもらいました。

(リフォーム後のリビング。窓がある方が西側)
綿引さん 上の部屋は先ほどの部屋の改修後です。和洋室6畳と和室8畳の2部屋をつなげてリビングダイニングにして、もう一つの和室6畳はそのまま和室にしています。
梁の裏の鉄骨も残してあり、壁と床の無垢材は長野県産の唐松を使っています。
夏の暑さはいかがですか?
綿引さん 暑いことは暑いのですが、試しにエアコンを使わず過ごしました。西側に大きな窓があるため、西日が当たる時間帯はかなり暑いです。ただ、湿気はほとんどなく、木を多く使っていることもあってカラッとした居心地の良さがあります。室温計は30℃を指していても、体感的にはそこまで暑くは感じませんでした。
今後はエアコンを使うつもりですが、日中あまり家にいない方なら、夏でもそれほど問題はないかもしれません。
窓もリフォームされたそうですね?
綿引さん 冬にこそ効果を発揮すると思いますが、窓まわりは断熱性を考えてすべて見直しました。樹脂製内窓(樹脂製フレームと真空断熱ガラス)を追加して二重窓にしたり、樹脂製窓(樹脂フレームと真空トリプルガラス)に替えたりしています。
二重窓はすべてに取り入れるのは予算的に難しかったので、場所によって内窓を付けるところと付けないところを分けました。冷気の侵入経路を考慮して判断していただきました。
リビングの窓は二重窓ではなく樹脂製窓を採用していて、ここは特にこだわって交換しました。
ご自身でも作業をされたのですね?

写真:株式会社 東洋開発提供(リフォーム前のキッチン)

(リフォーム中のキッチン)

(キッチンの壁のタイルをカットする綿引さん)
綿引さん キッチンの壁にタイルを張ったのですが、これは自分たちで購入して施工しました。設計士さんが一緒に手を動かしてくださる方だったので、指導を受けながらタイルをカットして作業しました。コスト面でも、材料費と大工さんの人件費分を一部抑えることができました。

(リフォーム後のキッチン)
壁塗装やタイル貼りなど、壁・床・天井といった仕上げの一部は自分たちで行いました。床は施工してもらった上にオイルを塗り、壁は塗料を塗ったり、リビングでは下地の石膏ボードのビス穴をパテで埋める左官作業もしました。

(リビングにあたる部屋で下地の石膏ボードを固定するビス穴をパテで埋める作業)
リフォームで大変だったことは?
綿引さん 調査しても、実際に開けてみないと分からない部分があり、追加費用がかかりました。本当は外観も手を入れたかったのですが、予算の都合で断念。その分、DIYで床のオイル塗りや壁の塗装、タイル貼りなどを自分たちで行いました。
リフォーム会社の選び方と工期について教えてください
綿引さん 信頼できる設計士さんがいて、その方に紹介された地元の工務店にお願いしました。もともと顔見知りだったこともあり、安心して任せられました。
当初はもっと早く住み始めたいと思っていましたが、実際には予定より工期が延びました。リフォームは進めてみないと分からない部分が多いと実感しました。
リフォーム補助金についてお伺いできますか?
綿引さん 耐震では下諏訪町から100万円、県から50万円をいただき、評点は0.31から1.10へ改善しました。窓の断熱改修には国の「先進窓リノベ事業(補助金)」で約160万円、断熱改修と県産木材の利用を組み合わせた工事には県の「信州健康ゼロエネ住宅助成金(リフォームタイプ)」で約120万円を活用しました。「窓リノベ」と「信州健康ゼロエネリフォーム」は工務店が申請、耐震は自分たちで申請しました。
改修を終えて感じたこと、アドバイスは?
綿引さん 信頼できる設計士さんと工務店に恵まれたことが一番大きかったです。補助金については、契約書を分けるなど手続きが複雑で負担もありましたが、補助制度に詳しく慣れている工務店ならスムーズに進められると思います。
下諏訪町での暮らしはいかがですか?
綿引さん 移住して9年目になります。町がコンパクトで暮らしやすく、歩いて行ける範囲に生活に必要な施設がそろっています。自然も身近にあり、地域の方々にも温かく迎えていただきました。

写真:下諏訪町提供(下諏訪温泉街)
小商い(こあきない)の活動について教えてください
綿引さん 女性が小さな商いを始められるようにサポートする活動をしています。イベントとして下諏訪町の商店街で「小商いの見本市」を開き、全国から15店舗が集まりました。売るだけでなく、人とのつながりが広がるのが魅力で、商店街の活性化にもつながることを願っています。

(小商いの見本市)
最後に、暮らしの中で大事にしていること、今後の展望は?
綿引さん 自宅には下諏訪町ならではの温泉が引かれていて、日々の暮らしの中で活用しています。下諏訪は古くから温泉地として知られ、地域の生活にも温泉文化が根付いています。将来的には民泊のような形で外の方にも体験していただけたらと考えています。地域に根ざしながら、自分らしい暮らしを続けていきたいです。

(小商いの実践者の皆さんと記念撮影)
■写真11枚:綿引さま提供



