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富士見町
富士見町移住体験談 渡辺様
update : 2024.09.25
(富士見町で物件を購入し、改修した渡辺さん宅)
富士見町では町内の空き家を有効活用し、移住・定住の促進による地域の活性化を図るため、居住を目的として空き家を改修する方に対し補助金を交付しています。
2023年度に補助金を活用して改修したのは12件で、お風呂、トイレ、キッチンなどの水回りの改修が多く、断熱性能が高いペアガラス(複層ガラス)窓への交換もありました。
今回は、改修補助金を活用し、購入した物件の断熱性能を高めるため、サッシ、玄関扉などを改修した渡辺さまにお話を伺いました。
(渡辺さん夫妻と息子さん)
はじめに、住居はどのように探されましたか?
渡辺さん ネットで「富士見ウツリスムステーション」(以下、ウツリスム)さんが扱う物件で良さそうな物件を見つけて。ホームページ自体も見やすかったですし、役場が運営しているということで信用もできましたし。電話をして直接、お話を伺いに行き、紆余曲折あったのですが、なんとか決めることができました。
写真:富士見ウツリスムステーション提供(富士見駅舎内に構える富士見町役場の出先機関「富士見ウツリスムステーション」では、移住相談を受けているほか、空き家の相談にも応じている。地域のことを熟知した相談員が、住まいや仕事、子育て環境、各種移住支援制度の紹介などをサポート)
物件はスムーズに決まったのですか?
渡辺さん 実はスムーズじゃなかったんですよ(笑)。
初めは地元の不動産情報サイトを見て、価格もそこそこで富士見町内でいい物件があって話を進めて、申し込みをしようと思った当日に、家主さんから「やっぱり売りたくない」と言われたんです。今、思えば推測ですけど、僕が改修をする前提で話をしていたので、その方、その家をすごく気に入られていて、改修を快く思われなかったのかなと。それが2022年の年末で、「年末に決めて引っ越しに向けて準備しよう」みたいな気持ちだったんですけど、全部リセットされちゃって。
この物件は「ウツリスム」さんのサイトで扱う物件の中で一番人気の物件だったらしいんですが、契約予定の方がキャンセルになったそうで「内見しませんか」と連絡をいただきました。そこで家族と内見をして購入を決めました。
(渡辺さんが気に入った「富士見ウツリスムステーション」の改修前の物件/
庭からは南アルプスの山々が見渡せる)
写真:富士見ウツリスムステーション提供
(富士見ウツリスムステーションでの相談の様子。※写っている方は渡辺さまではありません)
物件の決め手はどこでしたか?
渡辺さん 正直、広さは80平米くらいなのでそんなにすごく広い平屋という感じではないけど、家族3人で住むには十分だと思いました。妻と話して即決という感じです。
ただ、それも契約する直前、4月だったんですけど、売り主さんが「やっぱり取り下げます」みたいな。「なんか僕、そういう運命の人なのかも」と、その時、思いました(笑)。
それで、「ウツリスム」の担当者さんが、「お子さんの学校のこともあるし、渡辺さん、その気になられているから…」と売り主さんに一晩交渉してくれました。その話が出た翌日の昼くらいに電話がかかってきて、「売り主さんに分かっていただけました」と連絡をいただいて。そういったわけで、すんなりは決まらなかったです(笑)。
富士見ウツリスムステーションの取扱い物件は、早い者勝ちではないのですね?
渡辺さん 「ウツリスム」さんから最初、お会いしたときに「渡辺さんは移住後のビジョンが明確にありますね」と言われたんです。僕たちの移住の目的が明確だったことが良かったみたいです。
なんとなく「涼しくて、山のある自然のところへ行きたい」という考えではなく、もちろんそれも理由のひとつですけど「ここで何をしたいか。自然の中で、子どもにぜひ通わせたい学校が近くにある、子育てをしたい。東京でワインの店やワイン専門のネットショップも運営していて、ワインブドウの栽培や畑をやりたい」というのはお伝えしていたので。
「ウツリスム」さんには「売り主さんの大事な家を、大切に継承してほしい。区の活性化、町の活性化、購入者との交流なども大切にしたい」との意向があるようです。
あとは投資物件的な見方をして買いにくる方も多分いると思うんですけど、そういう方ではなく家族で住んでもらうのが一番理想的なのかなと僕は感じました。
(八ヶ岳連峰のふもとの富士見町)
(写真、地図:富士見ウツリスムステーション提供)
改修は初めから考えていましたか?
渡辺さん 最初から考えていたのは、まず窓ガラスがシングルガラスだったんです。秋口に泊まったときにけっこう寒いなと感じました。前のオーナーさんは別荘として使われていたので、あまりコストをかけずに住んでいたと思うんですけど、実際住むとなると、窓をペアガラスに替えるのは必須でした。だから家の改修の目的は、断熱性能アップなんですよね。
改修業者選びは、どのようにされましたか?
渡辺さん 入った業者は2社で、工務店さんともう1社は給湯器が壊れていたので、熱効率が良く省エネ効果のある給湯器に入れ替えてもらうために、別の業者さんに入ってもらいました。
今回、町の改修補助金を使う予定だったので、年度内に工事が完成している必要があったんですけど、「とてもじゃないけど、それまでに大工さんは回せない」というところばかりだったんです。
そこで、山梨県の小淵沢の業者さんに紹介していただいた原村の業者さんがようやく請け負ってくれることになったんですが、まさかこんなに業者さんが決まらないとは想定していませんでした。だから業者選びが一番大変でしたね。仕事しながら探したので業者選びは結果的に1カ月くらいかかりました。
(改修前の状態)
改修はいかがでしたか?
渡辺さん 給湯の入れ替えは、比較的早く終わったんですよ。サッシは、選ぶことから始まって、工事する箇所ですよね。2回くらいだったかな、工務店さんに家に来てもらって、いろいろお話をして。
窓はペアガラスの中でもいろいろあって、アルミのフレームじゃなくて樹脂のタイプは熱伝導率が低く断熱性が高い素材なので、樹脂のタイプに替えてというのは最初から考えていました。
色もかなり悩みました。樹脂サッシのフレームの色はあまり選べないんですよね。僕の時も白か黒みたいな感じで、家の外壁は白だったのでフレームは黒もありかなと思ったんですけど、結果的には白にしました。
あとは、ネットでいろいろみたりして、網戸のところに「中桟」といって真ん中にフレームが入っているのと入ってないのがあるんですけど、それは「中桟」がないタイプの方がシンプルでかっこいいので、ないタイプでお願いしました。
(ペア(2層)ガラスの樹脂サッシに改修。2枚のガラスの間に「中空層」と呼ばれる空間があり、スペーサーと呼ばれる乾燥剤入の金属部材を間に挟むことで、断熱性能を高めている)
ただサッシを交換することによって、今までシングルガラスだったところに丈夫なペアガラスをはめたので、厚みが増したんですよね。サッシの室内側は障子があったので室内側には戻せない状態で、外側に出っ張った状態になったので、建築用語で言うと壁を「付加す」(ふかす)ということをする必要があったので外壁の工事もしたんです。
(改修後の状態。ペアガラスのサッシの入れ替えに合わせ、外壁も工事)
ペアガラスのサッシの値段はいかがでしたか?
渡辺さん サイズで値段が違うので、場所によって値段が違うんです。高さが180センチのサッシで、その1セットで10万7500円でした。
外観の写真を見てもらえば分かるんですけど、南向きの窓は面積が大きいんですよ。だから値段は、そこそこ掛かって、サッシだけで60万円くらいです。
それと、東向きの腰窓(大人の腰の高さに設置される窓)1枚、北向きの腰窓1枚で、サッシ全てで75万円くらいです。
入れてみた実感は、冬の寒い時期だとアルミはフレームの内側から触ると冷たいですけど、樹脂サッシは室温とそんなに変わらないので冷たくないです。窓ガラスももちろん冷たくないですし、断熱に関しては効果覿(てき)面でした。結露もしませんね。
1度だけ、加湿器でずっと加湿をしていたら若干、内側が少しだけ結露して、そのときは壁も若干、湿っていました。
玄関扉についてはいかがですか?
渡辺さん 玄関の扉は元々、規格が古い日本のサイズで幅が狭く、昔のアルミのタイプで割と傷んでいて、扉としての機能はしていたんですけど、幅の部分が気になって。玄関って見栄えの面でも大事じゃないですか。玄関だけはちゃんと豪華にしようと、ちょっとヨーロッパっぽい感じにしたかったんです。
ネットで探して「これにしてください」と、玄関は完全に木製のタイプにしました。いわゆるアルミの上から木製のシートを貼っているタイプではなくて、完全にウッドのタイプです。
(改修前の玄関扉)
扉を選ぶときに断熱性能が心配で、業者さんに電話して聞いたら「北海道でも使っていて寒くない。長野県でも使っていただいているところ、たくさんありますよ」と言われ、今の扉にしたんです。
断熱性能は、木の性質や厚みもありますし、小窓も付いているんですけどペアガラスを使っているので、冬場とかまったく冷気が入ってくる感じはなかったですし、暖かくなりました。
(改修後。幅が広く厚みもある木製扉に入れ替え)
ドアの取っ手のところも普通のガチャッと回すタイプではなく、引くと開いたり、内側からだと押すだけで開いたりする取っ手を選びました。なぜかというと、うち、ワインの販売とかやっていてダンボール持って出入りすることが多くて。実際付けてみると「おしゃれでいいじゃん」と、正解でした。なので、その辺の部材とかも全部指定して加工も全部指定しました。
(改修後の玄関。扉の横の腰窓のフレームも木製で統一し、ペアガラスに)
玄関扉の横に付いていた腰窓も、元々シングルガラスが入っていたんですけど、ペアガラスに入れ替えて。採光のこともあったのでそこの腰窓は残したいということで、玄関扉がウッドになるので腰窓のフレームはアルミだったんですが、そこもウッドにして全体の雰囲気を合わせたんです。
工務店さんにやってもらったのはそこまでです。
あとは玄関周りの外壁は「YouTube」を参考にして自分で素材を買って塗り壁にしました。
(改修後。玄関扉の周りの外壁は自身で素材を買って塗り壁に)
自分で塗ったのは玄関扉の周りだけですか?
玄関の内側の壁も漆喰(しっくい)を自分で塗っています。
もともと緑色の和風の壁紙が貼られていたんですけど、緑色だと暗いんですよ。玄関は入ったときに明るい雰囲気にしたかったので、塗り替えをしています。
左官道具は同じ物です。玄関も含めて漆喰と同じような塗り壁なので手際が悪いと最初に塗った方から乾いてきちゃうんです。乾きはじめているところを修正するとおかしくなっちゃうので、その辺は気を使いました。やってみないと分からない部分です。
自分では満足できる仕上がりになりました。
(改修前/改修後。扉を木製に入れ替え、玄関周りの壁は渡辺さん自身で漆喰を塗り、明るい雰囲気に)
改修費用は全部でおいくらでしたか?
渡辺さん サッシ交換と外壁工事、玄関扉、省エネ給湯器に交換、全部で改修に掛かった費用は260〜270万円です。改修補助金の申請は75万円くらいでした。補助金はありがたいですね。
改修されてみて、ご家族の感想は?
渡辺さん 玄関の扉周りは頑張って塗ったんですけど、妻は興味ないみたいで「あー、いいんじゃない」みたいな感じでした(笑)。ただうちの妻、寒いのが大嫌いなんですよ。なので、家の断熱性能が上がって、冬の寒さへの不安が払拭されたことは良かったと言っています。
冬は体感的には5度くらい上がった気がします。断熱性能の高いサッシに替えてから薪(まき)ストーブを使ったら、熱が逃げにくくなっているせいか、そうとう部屋は暑いので、薪を焚(た)きすぎた時は窓や玄関まで開けました。外は氷点下なんですけど。
今後は他にも改修予定はありますか?
渡辺さん もともと付いていた薪ストーブは扱いが難しいタイプなんです。今年の冬に向けて入れ替えようかなと考えています。
(購入時に備え付いていた薪ストーブ)
薪はどうしていますか?
渡辺さん 実際に本格的に住み始めたのは3月末からで、そこまで厳冬期ではなかったので、違う工務店さんから建築の廃材もらったりして薪にしました。
実はこのエリアでは「薪の会」という有志の会があって、最近それに入会しました。薪は近くの遊休地とか、荒廃している所の木を「切ってくれ」と言われたら「薪の会」で切りに行って、それを薪として入手する感じです。
基本的には自分で軽トラとチェーンソーを持っている人が入れる会です。
切ってきた丸太を自分でさばかなきゃいけないので、そういうことを自分でするのが難しい方は、軽トラ一杯1万5000万円程度で買う方法もあると思います。
改修をお考えの方にアドバイスをお願いできますか?
渡辺さん 一番苦労したのが工務店探しなんですよ。家が確定したのが2023年8月20日ごろ、補助金の閉め切りが2024年の3月末で、限られた中でやったのですごく苦労しました。
信頼できる工務店を事前に調べておくのは、すごく大事だなと思います。2023年の春ぐらいから動いていればよかったとその時、思いました。事前に相談できれば工務店さんからもいろんなアドバイスがどんどん出てくると思います。工務店さんが忙しく見つからないというのは、このエリア特有かもしれません。
実はフローリングも張り直したかったんですが、3月末までに終わらせなきゃいけなかったので先延ばしになりました。結局お盆明けからやることになったんですけど、別工事になるので効率は良くなかったですよね。ただそこまでやっていると年度内に絶対終わらなかったので。
自分でできそうなところをDIYでやれるなら、コストは下げられるし、車もそうなんですけど自分でやったところは後々自分でメンテナンスできるんですよ。例えば壁が変色して傷んできたとき、業者にすぐ頼むのかといったら、自分で補修ができるのかもしれないですし。
最後に、富士見町の暮らしはいかがですか?
渡辺さん 夜は涼しくて「エアコン使わなくても良いというのは本当にありがたい」と妻も言っています。
妻も東京の仕事が残っているので、東京に行ったときは、信じられないくらい暑い環境なので、満足度はすごく高いです。ただ最近は、昼間、富士見町も暑いので、「エアコンを付けようか」とか相談しています。
あとはいろんな人がいますね。皆さん、優しいですし、人が良いです。こっちに本格的に引っ越して3カ月くらいなんですけど、以前の東京より圧倒的にこっちの方が知り合いは多くなっています。それは区に入って「出払い」(地区の共同作業)に出て、コミュニケーションを取るようにしているので、周りの方たちも徐々に「ちゃんと中に入ってやりたいんだ」と思ってもらえているのかなと思います。
短期間では人となりは分かってもらえないんですけど、やっぱり移住者側もそういう努力はしないとだめだろうなと最初から思っていました。「出払い」で朝6時から草刈りするのもまったく苦ではないです。せっかく、こういう里山のいい環境に来たので、こういう状況を維持するために自分も一役買えたらなと。妻もそれに関しては「そうだよね」みたいな感じで富士見町の暮らしを楽しんでいますよ。
(改修後、断熱性能が増し、八ヶ岳の麓で快適に暮らす渡辺さん家族)
■写真15枚:渡辺さま提供