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塩尻市移住体験談 近藤様
update : 2024.02.22
写真(塩尻市街地と北アルプス)、地図:塩尻市提供
長野県のほぼ中央に位置し人口6万5000人余りが暮らす塩尻市。まちは南北に長く、東は岡谷市、西は朝日村、南は辰野町、北は松本市、木曽方面は木祖村・木曽町と隣接し、主要幹線道路の長野自動車道、一般国道19号、20号及び153号が通り周辺地域へのアクセスは良好です。
鉄道はJR中央東線(甲府、新宿方面)・西線(名古屋方面)が通り、塩尻駅には特急も止まります。また篠ノ井線では松本、長野方面まで乗ることができます。
木曽路の入り口に位置する楢川地区には、中山道の贄川宿と関所、奈良井宿、木曽漆器の町•木曽平沢があり、多くの観光客が訪れています。特に中山道11宿の中で最もにぎわいをみせた奈良井宿は、往時の景色をよく残していることから、漆工の町「木曽平沢」とともに国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
今回は、奈良県から塩尻市木曽平沢に移住され、別荘として使われていた建物を宿として運営される近藤さまにお話を伺いました。
(木曽平沢に移住された近藤さん)
はじめに、移住の経緯をお伺いできますか?
近藤さん 2020年5月に奈良県から塩尻市に移住しました。関西を拠点にしていて西なら広島、東だったら長野が風土的に好きだったのでその辺りで探していたところ、「日本仕事百貨」という求人サイトで塩尻市の南部、木曽平沢で空き家再生を目的とした仕事が見つかったため、塩尻市に決めました。
それまで塩尻市に来たことはなかったのですが、隣の松本市で開かれる工芸やクラフトを展示する「クラフトフェアまつもと」というイベントに3年連続で来ていたので、この地域の雰囲気や、ものづくりをされる方が多いということは知っていて。
それと、前職は建築関係の会社に勤めていたので、町並みの景観が良い地域があったら住んでみたいと漠然と思っていたのです。
住居はどのように探しましたか?
近藤さん 仕事場が木曽平沢だったので、住まいも木曽平沢で探しました。
ネットで物件情報を探したり、空き家バンクの情報を見たりしましたが、見つからなかったので実際に木曽平沢を歩いて回って空き家を見つけました。
市民交流センター「えんぱーく」の4階に入る「(株)しおじり街元気カンパニー」(以下、街カン)という第三セクターの会社が、空き家バンクの運営と移住相談の窓口も兼ねているのですが、「街カン」にその空き家の大家さんを紹介してもらい、お借りできたという経緯です。
街カンについて教えてください
近藤さん まずは、地権者や大家さんといった売り手•貸し手が相談に来やすい環境があると感じています。
「街カン」の社長は塩尻市出身で塩尻市役所を勤め上げており、その知識や情報から塩尻市のことならこの人に相談したらなんとかなるだろうと、いろいろな相談が「街カン」に集まっているという側面があります。
また移住相談窓口にもなっている関係で、「こういう挑戦がしたいんだ」「こういうふうに住みたいんだ」と具体的に何かやりたいことを持っている人が来た時に、つなげられる強さがあるから空き家バンクの成約率が高いんだろうなと思います。
物件自体は正直、「良いもの」がすごく集まるということではなくて、不動産価値が低かったり、大幅に手を入れないと使えなかったりするものも扱っているところが逆に強みと言うか。一般の不動産市場から外れがちな部分をカバーできることに、会社が存在している意味はあるんだろうなと思います。
塩尻市には空き家バンク運営において協力関係にある、市内の不動産業者でつくる塩尻市空き家利活用促進連絡会という組織もあるので、よく情報を知っている不動産業者は多いですし、市としても空き家バンク物件の改修や片付けに使える補助金を出して支援しているので、ぜひその辺りを活用してほしいです。
塩尻市は、どのようなまちですか?
近藤さん 人口が集中しているのはJR中央線の塩尻駅を中心とした市街地エリアになると思いますが、交通の便が良く、塩尻駅では特急も止まり、松本や都内•新宿方面へも列車が運行していますし、また名古屋方面へも運行しています。
高速道路のインターも2カ所あり、車なら松本、安曇野にも近いですし、「山に登りたい」「湖を見たい」そういう欲求がある人も移住者の中には多いと思うのですけど、余暇・休日を楽しく過ごす上での拠点としても塩尻市はすごく各地へのアクセスが良いです。
また、「のるーと塩尻」というAI活用型オンデマンドバスも運行していて、市街地方面では停車する場所も多いです。
街はコンパクトなので買い物にも病院にも困らないし、かといって田舎過ぎないですし、地方都市で暮らしたいなという人は最初のステップとしてすごく住みやすい場所な気がしますね。
そして生活コストが抑えられる点も塩尻市の暮らしやすさなのだと思います。
木曽谷にある木曽平沢での暮らしはいかがですか?
近藤さん 木曽平沢は伝統的な漆器の産地です。産地で暮らすのはすごく珍しいことだと思うんですよね。国の重要伝統的建造物群保存地区にもなっているので、歴史的な町並みが日常生活の中にあるのが特徴です。
(木曽平沢の町並み)
木曽平沢は中心市街地と違って標高が850mから900mくらいなので夏は涼しいと思いますし、今の家にはエアコンはないです。
冬は寒いですが、だからこそ得られるものもたくさんあって、そういうのが豊かだと思います。古い町並みが雪をかぶる様子も美しいし、春は山菜も採れますし、四季の移ろいがすごく明確なのも良いですね。
(冬の木曽平沢)
また、古くから住宅が密集しているので近隣のつながりが強い地域で、日々の暮らしを丁寧に営まれている印象があります。
木曽平沢の買い物面はいかがですか?
近藤さん 全体的に木曽平沢での生活はそんなに便利ではないと思います。スーパーはここから車で30分ほどの中心市街地の大門や広丘まで行かないとないですし、伊那まで車で30分なのでそちらに買い物に行く人もいるようです。またコープ(生活協同組合)の宅配を利用される方も多いです。
私の場合は、買い物は2週間〜1カ月に1回、お肉とかお魚を中心市街地にある店舗で購入し、家で冷凍して、お野菜を買うときはなるべく生産者さんに近いお店で買い物をしたいので、木曽平沢の入り口にある「道の駅 木曽ならかわ」で買ったりします。
ただお野菜やお総菜などの頂き物もすごく多いので、実は食材はあまり買いに行く必要がないです。
写真:塩尻市提供(木曽平沢の「道の駅 木曽ならかわ」にある「木曽くらしの工芸館」。伝統工芸品「木曽漆器」「南木曽ろくろ」を始め、桧製品など日常使いの道具から生活を彩る工芸品の他、ワインや地酒、そば、漬物などの食品もあり、市内の地場産品がそろう)
プラスチックを出さないとか自然に近い暮らしができたらいいなと思っていて、日用品などは木曽町の木曽福島にサステナブルな商品を扱うお店がありますし、岡谷市にもオーガニックマーケットがあるので、1カ月に1回、容器を持参して洗剤だけを入れてもらう形で買いに行っています。
木曽平沢の公共交通についてはいかがですか?
近藤さん JR中央(西)線の木曽平沢駅があるので電車も乗りますが、9割は車ですね。車はあった方が確実に便利だけど、なくても生活はできると思います。
田舎で電車の本数も少ないけど買い物に行って帰ってこられるし、通勤•通学をされている方もいます。
また、「すてっぷくん」という路線バスが市内を運行していて、木曽平沢から中心市街地もルートの一つです。
移住者の受け入れ態勢はいかがですか?
近藤さん 移住者は基本的には歓迎されると思います。祭りとか地域の清掃や回覧板を回すなどの地域活動は、この場所に住む一員として大切に参加しています。木曽平沢の人口は950人くらいなんですけど、移住者はまだそんなにいません。この10年だと数十人いかない程度だと思いますが、そこを増やしていきたいと思っています。
お仕事は宿の運営ということですが?
近藤さん どの市町村でも人口減少や空き家問題を抱えていますが、その空き家を有効活用するためと、少しでも多くの方にこの地域に訪れてもらえるように現在は宿として3棟の運営をしています。
1棟は1931(昭和6)年に建てられた旧手塚家の別荘を「日々別荘」という名前で、1棟貸しの宿泊施設と喫茶室として営業しています。
歴史的な建物は見ることはできても泊まることはなかなかできないので、利用者の方々にはそこに価値を感じてもらっていると思います。
木曽平沢の地域に帰省した家族が泊まるケースや、国内や海外の方が日本の伝統的な地域で趣のある建物に泊まる体験を楽しむために訪れることもあります。
(日々別荘)
地域に入るきっかけとして観光の「日々別荘」があるのですが、私がやりたいのは観光から移住につなげることなので、「木曽平沢いいな」と思った人が「1週間泊まってみよう」「1カ月泊まってみよう」「半年行ってみよう」みたいな中長期で暮らしを体験できる宿泊施設を新たに2棟準備しました。
2棟目は1週間から数カ月、楢川小中学校に国内短期留学で来る家族が滞在するための家として主に運用していて、私設のおためし住宅です。
(2棟目の宿泊施設)
3棟目は、来春から少人数のお客さまを受け入れるゲストハウス兼、移住体験住宅のような形になると思います。観光というよりは木曽平沢の暮らしをできるだけリアルに体験するために2名まで滞在できます。2拠点生活の拠点として長期でも利用できるように想定していて、私もそこに住みながら移住につながるようなサポートをしていく予定です。
(3棟目の宿泊施設)
どのようなサポートですか?
近藤さん 「日々別荘」の喫茶室がこの地域の私設案内所も兼ねているので、要望があればこの地域や木曽漆器の工房などのガイドもしていて、海外から来られた方には、通訳を付けてガイドすることもあります。
(ガイドの様子)
工芸の他には「塩尻市で今、何が起きているか」も私は詳しい方なので、この地域で何か新しいことにチャレンジしたい人に対しては「今、塩尻市でこんなことが起きている」ということを、市内を案内しながらお話ししています。
写真:塩尻市提供(奈良井宿)
では最後に、塩尻市へ移住を考えている方へ、アドバイスをお願いします
近藤さん 塩尻市は移住先として住み良さがたくさんありますが、長野県内への移住を検討している方にとっては比較対象が多く、特徴を瞬時に把握しづらいと思います。なので、塩尻市のことをわかりやすく紹介したり案内してくれる人を見つけて、その人からいろいろ聞くのがいいと思います。そういう人に出会えるのが、移住定住相談窓口にもなっている「街カン」や私の宿泊施設です。
(日々別荘の喫茶室)
そこが横のつながりを持っているので「こういうことがしたいんだ」「こういう場所に住みたいんだ」という話をしてもらったら、適切な人を紹介してもらえると思います。
塩尻市は南北に長いので、地区によって特色が全然違います。なので、塩尻市というよりは具体的にどういった暮らしをしたいのかという視点で見た方が、その人に合う地域が見つかりやすいと思いますよ。
写真9枚:近藤さん提供
■日々別荘のHP(日々別荘のWEBサイトは4月にリニューアル予定です)
https://hibi-besso.jp/