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小谷村移住体験談 増富様ご夫妻

update : 2022.12.22

写真、地図:小谷村役場提供(北アルプスの麓、小谷村)

長野県の北西の端、北アルプスの麓に位置し、大自然に囲まれる小谷村。人口約3000人が暮らしています。豪雪地としても知られる村内には、豊富なコースバリエーションが自慢の3つのスキー場があり、県内外のほか、海外からも多くのスキーヤーが訪れます。

移住定住支援については、移住お試し住宅の利用や村の空き家バンク制度で物件を探すことができ、定住住宅取得支援補助金を活用することも可能です。
また村内で新たな事業や新分野の事業を始める方には、起業支援事業補助金のサポートもあります。

今回は、東京よりUターン移住され、中土の石原地区で日用品と暮らしの道具の店「紡ぎ舎(つむぎや)」を開業した増富さま夫妻にお話を伺いました。

(増富さま夫妻)

はじめに、移住された経緯をお伺いできますか?

ご主人 もともと小谷村出身で、高校を卒業するまで小谷に住んでいましたが、大学進学で関東に出て、東京の会社に就職して普通のサラリーマンを15年間やっていました。海外勤務もあって、東京と海外を行ったり来たりの暮らしを15年間していました。
直近はオーストラリアに住んでいたのですが、当時は40歳になるのが見えてきたタイミングだったので、会社にずっといるのか、どうしようかいろいろ考えていて、小谷村に住んでいる両親がだんだん年を取ってくることもあり、私が長男でもあるので「戻ろうかな」と。それで妻に相談して戻ってきました。

(オーストラリア時代の増富さま夫妻)

移住のお話を聞いた時のお気持ちはいかがでしたか?

奥さま 小谷村には年末年始などのお休みのときに、夫の実家に泊まったりしていたのでどんなところかは分かっていました。私も夫にずっとサラリーマンでいてほしいということはなかったですし、「本人がやりたいことをやるのが一番いいんじゃないかな」という気持ちでしたので「戻ろうかな」という話を聞いたときは自然な流れかなと。私も違う場所で暮らすことに抵抗感はなかったので「いいんじゃないかな」と思いました。

小谷村の印象はいかがでしたか?

奥さま 自然が豊かで美しいところなので、結婚してから小谷村に遊びに行くのが大好きでした。住んでからは、今まで住んでいた埼玉や東京での生活とはまったく違うなと感じましたし、改めて自然豊かなところだなと思います。

写真:小谷村役場提供(小谷村の栂池自然園、紅葉の時季)

家探しについてはどのようにされましたか?

ご主人 実家があるので、ひとまず実家を拠点に仮住まいをしてそれから探そうと思っていました。戻ってからは役場の移住者支援担当の方とかに相談して「空き家バンク(https://otarigurashi.com/property/#bank)もありますので登録してみたらいかがですか」などいろいろアドバイスもいただきました。

よさそうな空き家バンク物件が出てきたら役場の方が情報をくださって、見に行って「ちょっとここは大きすぎるね」とか「ここは改修するだけでもかなりお金が掛かりそうだから、一から建てた方が安いかもしれない」とか4軒ほど見ましたかね。それで1年半くらいかけて賃貸で良い物件が見つかりました。

(緑豊かな自然に囲まれる増富さまの住居)

役場の方の対応はいかがでしたか?

奥さま すごく、よくしてくださいました。

ご主人 空き家バンクに登録されているそのときの物件数にもよると思いますが、「こういう物件はありますか」と聞くと、それに合った物件を探そうと努力をしていただきました。
物件だけじゃなく、地域ごとの特色というか雰囲気、行事が多い少ないなど地域ごとのいろんな特色があるので、アドバイスをいただきながら探すことができたので良かったです。

住み心地はいかがですか?

ご主人 今、住んでいる北小谷の下寺地区は、道の駅「小谷」がある場所で、その近くの一軒家を借りているのですが、こぢんまりとした地区です。でも昔は北小谷の国道沿いの、いわゆるメインストリートだった場所なので郵便局もあるし、交番もあるし、温水プールと各種マシンのそろったトレーニングルームがある運動施設が徒歩1分以内にあって、ハード面でも充実しています。

ソフト面でも周りのご近所さんが本当にいい方々で助けられています。私たちが住むことになって歓迎していただいていますし、地区の行事も和気あいあいとしていて程よい感じです。

(春、下寺地区の桜)

奥さま 一般的に地方では、地区によってはつながりが強すぎて大変なところもあったり、もともと住んでいる方と移住者の交わり方に差があったりすることもあるようなのですが、この地区はちょうどいい感じだったので、なじむのも早かったです。ストレスなく皆さんに助けていただきながらなじむことができて、本当に良い場所を紹介してもらえたなと思います。

皆さん、やさしいですし、受け入れる態勢があるというか、よく話してくださいますし、ウエルカムな対応をしてくださいます。

ご主人 石原地区にある築150年近い蔵を改装してお店を始めたのですが、この物件を見つけてくださったのも周辺の地区の方でした。もともとは解体される直前だったのですが、お店の物件を探しているのを覚えてくださっていて「実はこういう蔵があるんだけど、どうですか?」とお声掛けしてくださり、そういった村の方の気遣いがお店という形になってつながっています。

(小谷村中土の石原地区に開業した「紡ぎ舎」)

あとは自宅の裏にお隣さんが持っている大きな畑があるのですが、「耕しきれないから、よかったら使ってくんねえかい」みたいな感じで使わせていただいています。「苗はこれ使うといいよ」とかいろいろ教えていただきトマト、ナス、サツマイモ、枝豆、トウモロコシ、オクラなどたくさん収穫できました。

(奥さまが畑で農作業されている様子/収穫したお野菜)

奥さま 畑初心者だったので、ちょこちょこ見てくださり「こうしたらいい」とか「これ使ったら」とアドバイスしてくださり、気にかけてくださいます。
そこの畑は近くの方々がみんなで集まってやっているので、近所の方とコミュニケーションもあり、そこでいろいろ話すようになった方もいますし、ありがたいです。

お店の改修についてはいかがでしたか?

ご主人 地元の大工さんにお願いして、それなりに手を入れました。

奥さま 自分たちで直せない屋根だったり、外側の補強だったり、そういう面は地元の業者さんにやっていただいて、店内に関してはもともとの雰囲気を残すようにしました。

(築150年ほどの蔵を改修し店舗に)

補助金についてはいかがですか?

ご主人 蔵の改装にあたっては、起業支援事業補助金という制度があって、村内で新しいビジネスを始めると補助を出していただけるのですが、空き家など遊休資産を有効活用してビジネスを始める場合は通常より多くの補助がでるので、その仕組みを使いました。
https://www.vill.otari.nagano.jp/www/contents/1638928551062/index.html

その他にも移住に関する補助制度があるようです。
https://www.vill.otari.nagano.jp/www/sp/contents/1647505519339/index.html

普段の生活で都会との大きな違いはありますか?

奥さま 小谷村は小さい商店やコンビニはあるのですが大きなスーパーがないので、買い物は隣村の白馬に行くか、自宅のある場所は小谷村の北限なので(新潟県)糸魚川に行きます。

都心に住んでいると、きょう食べる分はきょうスーパーに行って買えばいい環境ですけど、それとは違う生活になります。買い物に行こうとすると車で30分くらいかかり、夜も遅くまでやっているわけではないので、買い物は1週間分まとめて買ってその中でまかなうとか、そのペースが慣れるまでは東京にいた頃とは違うなと思いました。

冬の暮らしについてはいかがですか?

ご主人 小谷村は除雪のレベルがものすごく高いので国道や県道、村道などの公道沿いに住む場合は、除雪車で除雪されます。なので、私道から広い道路に出るまでをどう頑張るか、です。車は4駆のスタッドレスであることは大前提で、2駆ではきびしいと思います。

(公道はきれいに除雪される)

一軒家に住むなら屋根雪を下ろさないといけない場合もあるので、去年は屋根に上り雪下ろしをしました。大屋根は1回、それ以外は5回くらい下ろしましたので大変は大変です。

(雪国の風景、積もる屋根雪)

奥さま 不慣れであれば徐々に慣れていけるよう、長期なら村営住宅を役場の方に相談しながら紹介してもらったり、短期の住まいなら「おためし住宅」もあるようです。

村営住宅の場合は、駐車場の除雪に関しては役場の方にやっていただけるようですので(入居者の車の上と周辺の雪かきはそれぞれで)、一軒家に比べると雪かきは少なくなると思います。
どれくらい除雪に時間を割いたりだとか、自分たちでどれくらいやらないといけないのかとか、冬のことを考えて家を選ぶのは小谷村では大事かもしれないです。

お店のコンセプトについて教えてください

ご主人 日用品と暮らしの道具のお店です。器や生活用品全般、一部食品も扱っていますが全部、日本国内で作られたものにこだわっています。われわれが海外に住んでいたときに日本のことを客観的に見るようになり、特に「ものづくり」と「食」を中心とした日本の良さを改めて痛感したことがお店づくりの原点になりました。

(さまざまな産地に通い、集められた日用品と暮らしの道具)

そういった日本のいいものを国内外問わずに広めていけたら良いのではないかということは、会社勤めをしていたときから考えていたことなんです。そこで、会社を辞めて日本に帰国してから半年くらいかけて、青森から九州までとにかく自分たちの車で作り手さんやいろんな産地を訪れました。

(福島県にある、しょうゆ蔵へ。造り手さんを訪ねて)

皆さんにお話を伺ったり、ものづくりの現場を見させていただく中で、ますます日本のものづくりに引き込まれました。同時に小規模の作り手さんや産地が抱える課題も見えてきて、その作品や製品を販売して世に広めていくと同時に作り手さんや産地へ、何かしらの形で支援というかお手伝いができればなという思いでお店をオープンしました。
私自身がもともと金融系のバックグラウンドなので、経営に関する部分のお手伝いも将来的にはできればと考えています。

奥さま 一緒に作り手さんや産地を回っているうちに、お互い「自分たちでものづくりのために何かできることはないか?」という気持ちでいたので、自然と二人でこういう形になっていきました。

お客さんの感想などはいかがですか?

ご主人 皆さんおっしゃるのはこの建物、蔵のすごさ。かなりしっかりした蔵なので「こんな蔵よく見つけたね」という感想を持たれる方が多いですね。「いやー、小谷村にこんなお店ができたの」とおっしゃる方も多いです。近くにおしゃれなカフェなどもここ1、2年でできて、そこにわれわれのようなお店もできたので相乗効果も期待できると思います。

もともと小谷村というと栂池高原や白馬コルチナ、白馬乗鞍などスキー場が有名で、観光やスキー以外で人が来るところが(スキー場から離れている)小谷村の北の方まで広がってきているということを皆さん感じていらっしゃる。「新しい人の流れができているね」とおっしゃる方もいます。

写真:小谷村役場提供(日本有数のビッグマウンテン、栂池高原スキー場)

北の方でも新たな人の流れができているんですね

奥さま 村の北の方にあるカフェやおそば屋さんなどのお店は、全て移住者の方が始められています。皆さん、そこを目指して小谷村に来るという流れができたのはその方々によるところが大きいと思います。

ご主人 昔からずっと地元にいる住民の方は、北の方の何もないところに人が来るなんてそもそも思っていないし「何もないのに、こんなところで店なんかやってどうするだい」というのが地元の人の感覚なんだと思います。
やっぱり人が来るのはスキー場で、「あっちの方で店やんなきゃだめだよ」という人が多かった。

だけど移住者はそうじゃない魅力とか、何もないこの里山で、こんなに手つかずの自然も残っているし、ぽつぽつと集落があるこの雰囲気の良さみたいなものを分かっている。そこを見出して何軒かそういうお店ができて人の流れができて、地元の人たちも自分たちの住む地区の魅力にちょっとずつ気づきつつあるというか「ここに人が来るんだ」と。

(「紡ぎ舎」のある、自然豊かな小谷村中土の石原地区)

奥さま この辺を目指して人の流れができるというのを、だんだん村の方も分かってきて協力的に。うちの店がオープンする時も地元のかなり年配の方も来てくださって。

今までは外から人が来るような場所ではなかったところに実際に人の流れが出てきて「あの店ってどうなの?」と聞かれることも多いみたいで、それで皆さん見に来てくださって「こういうもの売ってるんだね。人に聞かれたら、そうやって説明しておくわ」って。そういう地元の方の意識も少しずつ変わってきているんじゃないかなと。

地元の方も期待しているんですね

奥さま よく言われます。やっぱり人の流れがあるとうれしいですし、「楽しみにしている」と言っていただくことが多くて。

今後、やっていきたいことはありますか?

ご主人 今後は小谷村だからこそ、みたいなこともやっていきたいという思いはあります。例えば、小谷村は「キハダ」という木が昔から有名です。「キハダ」は、皮を剝いでそれがお薬の原料になるんです。長野県の方であれば「御岳百草丸」の主要な成分であるオウバクの原料と言えばわかりやすいと思います。

(キハダの木)

「キハダ」の木は皮を売りますが、木の部分は山から運んで販売するとコストが掛かりすぎて見合わないので、なかなか活用されていませんでした。

われわれは全国の作家さんとつながりもあるので、キハダの木を有効活用して作品を作ってくださる方がいればいいなということを以前から考えていました。そして第1弾として、お店の蔵の横に生えていた「キハダ」の木をこの夏に切って皮を剥がしたんですが、その残った木を引き取って大町市にいらっしゃる木製のペッパーミルを作っていらっしゃる作家さんにお渡しして作品をつくってもらっているところです。

そういう小谷村ならではのものを使い、世界に通用するような工芸品に変えて小谷村のことを発信していって、小谷村の産業の一助になれば新たな可能性もあると思うのでやっていければと思います。

(店内のひとつひとつにストーリーがある。真ちゅうの箸置きや鍋敷き)

写真20枚:増富様提供

■紡ぎ舎
ホームページ:https://tsumugiya.jp/
インスタグラム:@tsumugiya_official


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