信州へ移住をお考えの方へ
移住者の声
佐久地区
小諸市
小諸市移住体験談 鴨川様
update : 2022.10.24
写真(浅間山南麓に広がる小諸市)、地図:小諸市役所提供
小諸市は浅間山の南麓にうつくしい農村風景が広がる一方で、小諸城址懐古園や北国街道の宿場、商家など古い街並も残す高原の城下町。
都心からのアクセスも良く、東京からは北陸新幹線を使い約1時間30分の距離で、新宿からは直行バスも出ています。
近年では多種多様な農産物が育まれる小諸の風土にほれ込み、カフェやベーカリー、レストラン、農業、ワイン造りなどをはじめる移住者も増加傾向。
また、千曲川沿いの標高600メートルから高峰高原の2000メートルまでの標高差は、高地トレーニングの適地としてトップアスリートからも好評です。
四季折々の景色やさまざまな体験、貴重な出会いが訪れる人々を魅了しています。
今回は神奈川県出身、北国街道沿いに古くからの理容室をリノベーションし、「ビストロ•アオクビ」をオープンした鴨川さんにお話を伺いました。
はじめに、移住された経緯をお伺いできますでしょうか?
鴨川さん 神奈川県出身で、東京で飲食業に携わっていたときに、小諸市の食のイベントが縁でつながりができて、東京と行ったり来たりする生活が2年くらい続きました。「いずれは小諸に来たいな」と思っていたところ、地域おこし協力隊の募集が目に留って、2016年に応募しました。ですので、小諸以外は考えていませんでした。
どのようなところが魅力でしたか?
鴨川さん 面白いことをやっている人が多いなと感じたのと、東京にもアクセスが良くて近いのに、浅間山とか御牧ヶ原台地とか大きい自然が残っていることもとても良かったですし、自分は料理をやるので野菜の産地であることも魅力でした。
写真:小諸市役所提供(浅間山)
“面白いお仲間”について教えてください
鴨川さん リンゴを原材料としてつくる「サノバスミスハードサイダー」という発泡酒を大町市の工場で造っているんですけど、その中のメンバーの一人が小諸のリンゴ農家さんで、年齢も近く話も合うのでいろいろ交流をしています。
それと今は休止中なんですけど「酒呑み百姓の会」という、酒米を田植えから仕込んで1年かけて最後にお酒にするという会に参加していました。東京から参加する人と小諸の人と半々くらい(会社勤めの方、おそば屋さんなど……)、の会で、「亀の尾」という酒米を使い最後は造り酒屋さんで仕込みをして4月に新酒ができるので、それをみんなで飲んで終わるんですけど、販売もしていました。
また、今は小諸もワイナリーがあるんですけど、ほかにもワインブドウを育てて委託醸造する人もすごく増えていて、ほとんどが移住された方々です。
この店のベンチやイス、テーブル、カウンターなどのオーダー家具を作ってくれたのも同じ年代で、小諸の方なんです。
(オーダー家具は小諸市の株式会社フォークロア工芸社製作)
知り合いをつくるには、どのようにすればよいですか?
鴨川さん 自分の経験ですと、1人、知り合いができると自然と5人くらいにつながると思います。共通のものが一つあって「この人、面白いな」と思ってもらえれば、どんどん紹介してもらえると思います。
自分の場合は、協力隊のときから副業がOKだったので、個人事業としてイベント出店や出張料理、ケータリングサービスをやっていたんですけど、小諸の食材で料理を作っていたことで注目していただけるようになりました。
写真:鴨川さん提供(協力隊時代に個人事業としてイベント出店や出張料理を行う)
地域おこし協力隊の頃の業務について教えてください
鴨川さん 2016年から2019年まで移住定住促進の業務をやっていまして、移住ツアーやセミナーを企画運営したり、空き家バンクの管理運営を行っていました。
当時の移住される層は、別荘地みたいなところがあるので引退して”終の住処“という感じでシニア世代が多かったです。それがだんだん、若い世代が増えてきて、ちょうど過渡期にいましたね。今は若い世代の移住者が多いようで、会社勤めの方からお店を開いたりする方もいるようです。
ツアーは街や山の魅力など、いろんな魅力があったのでテーマを立てて企画しました。例えば、農業も身近なので家庭菜園的なものはこっちに来たらやるかなという気がしたので、一緒に野菜を収穫したり、教わりながらやりました。ほかにも自動車教習所で雪道講習をやっていただいたり、生活に役立つようなものを行っていました。
セミナーは県が開いたものに参加したり、「銀座NAGANO」で移住カフェを開いて私が料理を作ってお酒を飲んだり、気軽なものもやっていました。
セミナーやツアー参加者のニーズは人それぞれなんですが、それに合わせられる懐の広さが小諸にはあると思います。例えば「車、乗りたくないから街場で何かないですか?」という方にも、小諸は“コンパクトシティー”ということでいろいろな機能を集約していますので、暮らしやすいですし。
当時の空き家バンクについてはいかがですか?
鴨川さん 常時公開していたのは20件程で、成約率も50%を超えていました。移住される方は関東エリアの方が多く、400万円くらいの中古物件が人気で高くても800万円くらいだったと思います。(https://www.city.komoro.lg.jp/cgi-bin/recruit.php/1/list)
若い世代の移住者が増えた要因などはありますか?
鴨川さん 市役所が積極的に移住者を受け入れていることも要因の一つだと思います。親身に物件を探したり起業相談に乗ったり、一緒に課題を解決していくというスタンスですので。1人、起業する方が出ると、続いて起業するケースが増えていきました。
自分も地域おこし協力隊に就く前からお店をやろうと思っていたんですけど、ここへ来るきっかけとしてその制度を利用させてもらい、結果として直接来るよりも良かったです。
オープンするにあたり物件はどのように探されましたか?
鴨川さん 賃貸なんですけど、協力隊だとネットワークが広がるので、大家さんが知り合いだったんです。ここの本町という通りでイベントを年2回やるんですけど、みんなで協力して料理を作る「一日レストラン」をやったときに知り合いました。ここもずっと空いていてイベントのときしか開けてなかったので「いいな」と思って交渉して、お借りすることができました。
(ビストロ•アオクビ)
開業に関する補助金についてはいかがでしたか?
鴨川さん 手厚かったです。当時から「行列のできる店舗誘致事業補助金」というのがありました。街の活性化のためという趣旨で街中での開業という条件で200万円補助していただきました。
それとは別の補助金になりますが、空き店舗を活用する際に補助されるものもあるようです。
(https://www.city.komoro.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyoushinkoubu/shokokankoka/2/4/7439.html)
(本町、北国街道沿いに位置する元理容室のサインポールが目印、「ビストロ•アオクビ」)
さらに、地域おこし協力隊の任期が満了して起業する人向けに100万円の補助も出たんですよね。(https://www1.g-reiki.net/komoro/reiki_honbun/e709RG00001271.html)だから合わせて300万円の補助がありました。
地域おこし協力隊として移住することはお勧めですか?
鴨川さん 協力隊の期間はある意味、お試し期間でもあるので、そこでつながりをつくって、起業の準備段階としていろいろやってみて、「いけるな」と思ったら本業にするというのはお勧めです。暮らしていけるくらいのお給料も出ますし、家賃補助も5万円までありました。
協力隊の任期中は企業の社長さんとか、いろんな方と知り合え、地域につながりをつくってから起業できるので、失敗する可能性も低くなると思います。
お店の名前について教えてください
鴨川さん 名前が鴨川なので、オスのマガモのことを「アオクビ」といいまして、青緑色をしているんですけど、そこから店名にしました。ビストロといったら普通、フランスの大衆食堂なんですけど、あえてイタリア料理を出しています。ここはもともと床屋さんでタイルは当時のままなんですけど、改装する前から天井の高さや家具の感じがパリのビストロみたいだなと思い、ここでレストランやったら面白いだろうなと。だからビストロにしました。
(ビストロ•アオクビ)
開業までの期間はどのくらいでしたか?
鴨川さん 4カ月くらいです。改修は基本的に大工さんにお願いしました。
写真:鴨川さん提供(店舗の改装中の様子)
床屋さんだった頃、奥のスペースは住まいだったんですが、カウンター席をつくって大人がゆっくり飲めるように改装しました。壁は、店の名前が「アオクビ」なので、そのカモの羽色ということで青緑色に塗りました。
(店の奥のカウンタースペース。押し入れをなくしたり、床をフローリングに)
ここはもともと押し入れだったんですけど、なくしました。床は畳でしたが剝がして、下地の木材を自分でホームセンターで購入して張って、その上に大工さんがフローリングを張りました。
(奥のカウンタースペース。天井には掘りごたつの名残も……)
建物自体は大正時代のものなんですよ。昭和になって前の床屋さんにしたんじゃないかなと思います。天井は当時のままで、2階の掘りごたつの名残もあります。
自分でリノベやDIYをする際のアドバイスはありますか?
鴨川さん 今はYouTubeだったり、情報は溢れているので、見よう見まねでけっこうできちゃうと思います。重要な箇所は大工さんにお願いしましたけど、失敗しても直せばいいので、全部、自分でやりたい人も時間を掛ければできると思います。
自分の場合は実家が工事関係だったので、道具は一通り持っていて経験もあったので。
こことは別に貸家で暮らしているんですけど、そちらは大家さんに「何してもいいですよ」とおっしゃっていただいたので、自分で壁を全部、白く塗り直して、畳をフローリングに張り替えました。
写真:鴨川さん提供(自宅の室内、フローリングや壁をご自身で改修)
料理のこだわりについて教えてください
鴨川さん やっぱり小諸は食材が豊かで種類もあって良いので、それを前面に出した料理を心掛けていて、お店のコンセプトでもあります。お米も小諸産ですし、ここら辺は高原野菜なんですけど多品目なんですよね。季節によっていろんな野菜ができますし。
写真:鴨川さん提供(小諸野菜のマリネ各種/原木シイタケのロースト)
お客さんの感想などはいかがですか?
鴨川さん 「野菜がおいしい」って言っていただけますね、お肉もお魚もですけど。やっぱり野菜がメインで、例えばトマトを出すときはトマトを生かすために、それに合うようなお肉だったり、お魚を考えますね。手に取った食材をどうやったらおいしく食べてもらえるかなと。それがここでやる意味でもあると思いますので、ここでしか食べられないものを出しています。
写真:鴨川さん提供(ニジマスと山菜のパスタ/信州ポークとプレミアム牛、そら豆の炭火焼き)
住んでから気づいた小諸の良さについて教えてください
鴨川さん 一般的に田舎って閉鎖的な気がするんですけど、小諸はけっこうオープンで面白いことをしてくれる人を応援してくれるんですよね。変わったことすると敬遠されるのではと心配する人もいると思うんですけど、なんでも受け入れる素地があると思います。
地域の人で自分から先頭に立とうという人は少ないんですが、先頭に立つ人を応援するのは大好き、という気風があるんですかね。「頑張ってね」みたいな感じで応援してくれますよ。
そして、こういう古い建物がきちんと残っているのは、ひとつ財産だと思いますし、新しく市役所の隣には交流、福祉、交通の複合施設「こもテラス」が整備され、小諸発祥の人気大型スーパーも入っていますし、総合病院や図書館などもあり、街の機能がしっかりしていますので生活しやすいですね。
写真:小諸市役所提供(こもテラス/隣の大型スーパー)
また、お店もチェーン店ではなく個人店が割と多いので、店主と知り合いになる楽しみもありますし、人と人とのつながりがつくりやすい街だと思います。規模感的にも4万人ほどの街なのでちょうどいいサイズ感だなと思います。小さすぎず大きすぎず、自然と街のバランスがいいのかなと思います。
■ビストロ•アオクビ
https://instagram.com/bistro_aokubi?igshid=YmMyMTA2M2Y=