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東御市移住体験談 坂本様
update : 2021.10.25
写真(浅間連峰を背にする東御市)、地図:東御市役所提供
東御市は長野県東部、上田市と軽井沢町の間に位置します。都内へは新幹線を使えば約1時間30分、車なら約2時間でアクセス可能です。人口は約3万人で、市の面積の半分以上が山林、4分の1は田畑と豊かな自然が残されています。市の中心部は千曲川が東から西に流れ、水と緑の美しい景観が広がります。気候は長野県内の中でも日照時間が長く、降水量と降雪量は全国的に見ても少ない地域です。その気候と水はけの良い土壌でワイン用ブドウの栽培も盛んで、2008年にワイン特区を取得し、現在、12のワイナリーがあり移住者にも人気です。
また、市内には4つの日帰り温泉があります。浅間連峰の南斜面にあり、八ヶ岳、美ヶ原、北アルプスを一望できる「湯楽里館」。プールやサウナ、トレーニング施設もある「ゆぅふるtanaka」。サウナ、水風呂のほかに福祉風呂もあり、浅間連峰を一望できる「御牧乃湯」。そして、芸術むら公園内にあり、宿泊もできる「明神館」。
今回は、福島県から東御市に移住され、充実した温泉ライフを楽しむ坂本さんにお話を伺いました。
(福島県から東御市に移住された坂本さん)
はじめに、移住された経緯からお伺いできますか?
坂本さん 福島県いわき市に住んでいたんですが、2011年3月11日の東日本大震災で自宅が津波の被害に遭って、同じ市内でも被害のなかった姉の嫁ぎ先に泊めてもらうことになりました。
当時は「情報が錯綜し、原発がどうなっているか、放射能の危険はどのくらいなのかまるで分らない状況でした。「ここにいては命に関わるかもしれない。取りあえずここを離れてどこかへ行こう」と13日の夜に話し合いました。
さて、どこへ行けばいいのかと思案しているところに、東御市の八重原に別荘を持つ大学時代からの友人が「今現在は別荘を使っていないから避難を考えているなら使ってもいいよ」と連絡が入りました。親戚にそのことを伝えると「皆ですぐそこに行こう。明日中に準備して明後日の朝出発しよう」と決めました。
ところが翌14日の11時に原子炉建屋で水素爆発が起きたとのTVの臨時ニュースを見て、今すぐにも出発しなければならないと予定を急きょ変更しました。0歳の赤ちゃんから87歳の私の母まで総勢8人、車3台でいわき市を出発しました。出発が午後になり途中で暗くなってしまったので、柏市にある親戚宅に一泊させてもらい、翌15日、東御市にやって来ました。当時、ここには知り合いはひとりもいなかったんですが、友人が別荘を管理していた方に連絡を取ってくれて、別荘まで連れて来てもらいました。
今の住居はどのように探されましたか?
坂本さん 友人の別荘に来てからしばらくして家を探し始めました。
こちらで知り合った人から「知人に家を貸してもいいという人がいるよ」と紹介があり、大家さんと面談をしました。地理も何も分からずどこに住むのが正解なのかも分からなかったけれど、平屋の一軒家で日当たりが良く静かな環境なので、決めさせていただきました。4月下旬のことでした。
紹介してくれた人と大家さん、そしてもちろん別荘を使わせてくれた友人には本当に感謝しています。
(坂本さんの住居兼指圧・整体治療院)
どんなところが決め手になりましたか?
坂本さん この家は紹介してもらったので、決して色んな条件を考慮して決めた訳ではないのですが、町の中心からも近いし、しなの鉄道の駅(滋野駅)も歩いて行けるし、国道18号には2分で出られるし、高速道路のインター(東部湯の丸IC)にも近く、何より温泉に近いのがいいですね。
もう住んで10年になりますが、今でもここより良いと思う条件の所はありませんね。
お仕事はどうされましたか?
坂本さん 東京時代を含めるとここに来るまで25年近くやってきたので、こちらでも指圧・整体治療院をやっています。家を借りる時に治療所にできるかどうかを考えて、ちょうど1部屋が治療室にできる間取りでしたので、ふすまや畳を替えて仕事部屋にしています。あと駐車場も広くお客さんの車を何台も止められるので、条件的にも合致していました。
(仕事部屋の治療室)
集客についてはいかがですか?
坂本さん 私がそこまでのすごい技術を持っていると言うつもりはありませんが、この仕事は確かな技術を持っていたらどこでもやれると思います。
医者に通っても良くならない人が改善すれば、患者さん(お客さん)は来るようになると思います。だから口コミが主で、宣伝をしたから来るというものでもないです。技術の他に相性もあるし、感じの良い悪いもあるでしょうから、人間性全てが評価されると思います。話の内容やその話し方、雰囲気等々。
さらにいうなら、そのお客さんなり患者さんにとってのNO1にならないと選んでもらえないと思います。ある意味とても厳しい業界で、毎回が真剣勝負のつもりでやっています。
福島では20年くらいやっていて一定のリピーターもあり、一生ここで仕事をしながら生きていくのだろうと思っていました。それ以外の人生があるとは1ミリも考えた事はありませんでした。自分の土地も家も家庭菜園の畑もあるので将来に不安はなかったです。
が、患者さんが一人もいないこの地ではその技術にさらに磨きをかけ、もっと確かな効果が出せるようにしないと新規開拓は難しいと感じ、新しい療法にも取り組み始めました。調べてみると世間では知られていない、さらに専門家にもほとんど知られていない実にさまざまな素晴らしい療法があることに驚きました。
新しい療法を試してみると今まで以上に効果が出ることもよくあります。これまでのキャリアに満足することなく新しい手技に挑戦して本当に良かったと思います。“ピンチはチャンス“逆転の発想ですね。
こちらで暮らされてみて生活面はいかがですか?
坂本さん 暮らしやすいですね。買い物はスーパーが家から10分の所に数店ありますし、温泉も家から10分以内で3カ所に行け(もう一つは15分)、半年券を買うと4カ所共通で使え、しかも格安なので365日温泉三昧です。今考えると、近くに複数の温泉があることが東御市に落ち着いた最大の理由ですね。
一番近い「御牧乃湯」は家から5分ですので、よく利用しています。夏なんかは温泉から出ると向かいの山の樹々が風にさわさわと揺れていて、ほてった体に涼しい風が吹いて来たりするともう最高ですね。一日の仕事や用事を済ませて温泉に入れば、後は一杯やって食事をしてくつろぐだけ。一日のオンとオフの切り替えがうまくできていいですね。
(道の駅も併設されている御牧乃湯)
写真:東御市役所提供(御牧乃湯)
温泉ライフはいかがですか?
坂本さん “温泉に入るようになってから風邪をひかなくなった”という人が周りに多くいます。私もほとんどひきませんね。夕方、温泉を出て家に帰る道中、西に向かって走ると夕日や夕焼けがきれいで、爽やかな風も吹いていて、すごく気持ちがいいですね。
北側には浅間連峰の南斜面が広がり、そこに点在する集落の風情がいい感じです。また暗くなるとその夜景もなかなかきれいです。夏には田んぼの近くを通るとカエルの合唱を聞けるのも楽しいですね。冬には露天風呂で星を眺めるのが好きです。10分も入っていると人工衛星が2つ3つと滑るように流れて行くのが見られます。時々プラネタリウムに行って星座の学習もしています。偶然の避難先がこの東御市で本当に良かったな!と、いつも思います。
それと、「御牧乃湯」は道の駅を併設していて地元の新鮮な野菜•果物を売っているので、ついでに買い物ができて便利です。他の温泉も直売所を併設しているので、その日に食べたい農産物によって、行く温泉を選んだりしています。時期によっては天然の山菜やキノコも売っているので重宝しています。私が東御市を薦める理由として温泉はかなり上位にあります(ヤッホー)。
写真:東御市役所提供(ゆぅふるtanakaのヒノキ風呂)
写真:東御市役所提供(湯楽里館の露天風呂)
写真:東御市役所提供(浅間連峰を一望できる明神館の露天風呂)
気候はいかがですか?
坂本さん 私がいた福島県いわき市は東北地方の一番南の太平洋側で温暖だったので、ここに来た2011年が平年よりも寒い年だったこともあり、3月中旬過ぎだというのにあまりの寒さに心底震えました。毎朝、霜で辺り一面が真っ白になるのを見てこれは大変な所に来たもんだ、と思いましたね。
PCで調べたら冬の平均気温は約7度、いわき市の方が高かったですね。寒さに関しては3年ぐらい慣れませんでした。しかしそれにも徐々に慣れてきて、今では地元の人が寒いと言っていても私には寒く感じないことも多いです。“なんと軟弱な!”と心の中で思ったりします。(笑)。
温泉の効果もあるかもしれませんね。雪はあまり降らないので雪かきの苦労はほぼありません。最近は温暖化の影響もあるので、比較的標高が高く寒冷地のここはむしろ狙い目かもしれません。
夏の暑い日は35度以上になり日中は暑いですが、夜になると気温が下がって寝やすいです。乾燥した日が多く、寝苦しいことはほとんどないです。だから住んでみて困る事は特にありません。唯一残念なのは、いわき市ではいつも普通に食べていた新鮮でおいしいカツオが食べられないことくらいでしょうか(悲)。
移住されて、ご家族はどのようにおっしゃっていますか?
坂本さん カミさんと一緒に温泉に行くんですけど、風呂上りには「あ〜、ここは良いところだね。ここに来てよかったね」といつも言っています。地場産の野菜や果物は新鮮で値段が安く家計に優しいですね。また頂くことも多く、ありがたいです。
20、30代に住んでいた東京や、また福島のいわき市でも、野菜は時期によっては高い印象で気軽に買えないこともあったけれど(実際野菜よりも肉の方が安い感覚だった)、ここでは新鮮な野菜が食べきれないほど食卓に並びます。「肉ばかり食べないでもっと野菜を食べなさい」と、カミさんにはよく責められます(泣)。
近隣の佐久市や上田市のような規模が大きい町ではなく、こじんまりした町なので住民サービスも行き届いている気がします。静かな環境で周りにはゆったりした自然がある。そこはすごく気に入っているところです。私の故郷のいわき市は平坦な土地なので、車でずーっと走っても、ずーっと平坦な景色ですけど、ここはちょっと走れば2千メートル超級の山があり、そこからの下界の眺めは素晴らしいです。
お休みの日は何をされていますか?
坂本さん 首都圏から1泊2日で来て登るような2千メートル級の山にもスキー場(私はスキーはやらないですが)へも30分くらいで行けますし、いろんなイベントやお祭り・講演会・講習会・展覧会・バードウォッチング・コンサート・マルシェ・酒造の蔵開き・ワイン祭り、またウォーキング大会や里山登山にもよく参加しています。多分年間で100回以上になると思います。同じ日にイベントが重なることもあってどこへ行こうか?悩むことも多いです(汗)。
東御市以外にも近隣の佐久市や立科町、小諸市、上田市などへもよく出かけています。車で30分も走れば近隣市町村へも行けるのでいろいろと楽しめます。生活の場は静かで商業地へのアクセスもよい、“ほどよく田舎”の東御市で良かったと思います。
写真:東御市役所提供(芸術むら公園、湯の丸高原)
東御市の定住アドバイザーに委嘱されたそうですが?
坂本さん 移住を希望する方や検討している方の相談に乗るのが主な仕事です。市役所などに問い合わせがあるので「もっと地元の話が聞きたい」というときに、実際に住んでいる人の経験談として、良い事だけでなく不満に思う事なども包み隠さず話してくださいといわれています。
また、今は新型コロナの影響で中止していますが、移住体験ツアーを行うときには、移住希望者の質問や疑問に答えたり、アドバイスをしたりすることになりそうです。移住者だからこそできるお話もいろいろあるかと思いますので。